試写会の様子

　3月6日、全編を『iPhone 15 Pro』で撮影したショートフィルム『ミッドナイト』のプレス向けプレミア試写会が行われた。これは、AppleがiPhoneのみを使って写真や映像を撮影する企画「iPhoneで撮影 ー Shot on iPhone」の一環として制作されたものだ。試写会には主演の賀来賢人、加藤小夏、小澤征悦、三池崇史監督らが登壇。全編をiPhoneだけで撮影するという珍しい取り組みとなった『ミッドナイト』の撮影の裏側や『iPhone 15 Pro』の優秀なカメラ機能について語った。 【画像】撮影で実際に使用された専用リグを組んだ『iPhone 15 Pro』 ■『iPhone 15 Pro』ならではの映像に映画界のプロたちも驚きを隠さず 　本作は1986年に手塚治虫が描いた隠れた名作『ミッドナイト』を三池崇史が実写化したもの。撮影には『iPhone 15 Pro』のみが使用され、ダイナミックなアクションとスピード感溢れる映像美が魅力の作品となった。 　試写会後におこなわれたトークセッションでは、監督とキャスト陣が撮影の舞台裏を語る。賀来は「iPhoneのサイズ感にしか出せないアングルの入り方があると思いました。僕がアクセルを踏むシーンでは、真横の位置まで入り込めたりする。普通のカメラでは入り込めない位置まで入れるというのは、画期的ですよね。よりパーソナルなところを切り取れるのがiPhoneで撮影することの強みなんだなと思いました」と、iPhoneならではの画角で撮影された映像に驚いた様子。 　加藤は「やっぱり、走っているシーンが印象的でした。普段の撮影では（カメラを乗せた）車と一緒に走るのですが、今回はカメラマンさんがiPhoneを持って私の横を全速力で走って撮影していました。初めての経験でしたし、実際に完成した作品を見たら、映像がすごい綺麗で。あんなに手ブレしないということにも驚きましたね」と、『iPhone 15 Pro』の手ブレ補正機能について言及。 　さらに三池監督は「一番驚いたのは、これだけ無茶な撮影をやっていながらトラブルがゼロってこと。壊れないんです。ドローンに乗せて激しい動きをすることもありましたが、あれだけの動きをすると、普通はデジタルなのでノイズが走ったりするのですが、そういうこともありませんでした」と、耐久性が優れていることに感動していた。くわえて「一台も壊さずに、ちゃんとお返しできましたよ」と安堵の笑顔も見せてくれた。 　司会から「iPhoneでの撮影が今度の映画の撮影にどのような可能性をもたらすと思いますか」と問われた三池監督は「ひそかにいろんな人がいろんな使い方をしていると思いますよ。僕らにとっては選択肢が増えていく。iPhoneは、我々が普段使っているプロ用の撮影機材にはない力を持っているので、お互いに違う方向に進化しながらも、誰がどうやって使うのかが問われていくと思いますね」とコメント。iPhoneでの撮影は映像の世界に新たなきっかけをもたらすかもしれない。 ■iPhone自体が優秀なカメラ＆アシスタントを兼任　撮影監督・北信康が語る制作の裏側 　監督とキャストのトークセッション終了後には、撮影担当の北信康によるトークセッションもおこなわれた。「最初にこのお話をいただいたときに、『ピントってどうするんだ』と思ったんです」と話し、iPhoneで撮影することに不安もあった当時の心境を明かしてくれた。 　通常の撮影現場では、ピントをコントロールする「フォーカスプラー」というアシスタントが撮影補助につくのだという。しかし今回は「iPhoneのフォーカスプラーは機能としてはかなり優秀な助手でした」と、iPhone自体が優秀なアシスタントになってくれたというエピソードを語った。 　くわえて同氏は、キャストのトークセッション時に加藤が話していた「走るシーン」について「従来ならスタビライザーをつけたもので移動車を長く引いて並走していたのですが、アクションモードを使うことによって、芝居に合わせてカメラが前に回りこむことができる。そのアドバンテージはかなりあって、レールとか移動車を使うとそのコースにしか行けない中、iPhoneを手持ちで撮影することで“芝居に対してアジャストしていける”んですよね。芝居のいいところで顔に回っていくことができる」と指摘。「そういうカットが撮れるっていうのは、いいなって思いますよね」と、iPhoneだからこそ撮れる芝居があったことにも言及した。 　会場には『ミッドナイト』の原作漫画のコマを使った装飾や、賀来らが着用した衣装の展示もおこなわれていた。撮影に使用された機材も置かれており、来場者は興味津々で楽しんでいたのが印象的だった。全編を『iPhone 15 Pro』で撮影した『ミッドナイト』はYouTubeで無料で視聴することが可能だ。本稿で触れたポイントにも注目しながら観てみると、そのクオリティに驚かされるかもしれない。ぜひチェックしてみてほしい。