森崎ウィン、オファーの大転機『レディ・プレイヤー1』が繋いだ“ガンダム”との縁と恩返し
俳優の森崎ウィンが、1月26日から公開中の劇場アニメ『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』にグリフィン・アルバレスト役で出演している。映画は公開10日間で興行収入19億円を突破する大ヒットを記録している。劇中で、森崎演じるグリフィン・アルバレストは物語を動かす重要な役をになう。現在は映画、ドラマ、舞台で多岐にわたる活躍をする森崎だが、その転機となったのはハリウッド映画『レディ・プレイヤー1』への出演。そこでガンダムに乗り込んだのも大きな話題になった。『ガンダム』が繋いだ縁、人生が変わったその瞬間には何があったのか。森崎ウィンに『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』について語ってもらった。 【動画】10日間で動員120万人突破の大ヒット、『ガンダムSEED FREEDOM』冒頭7分映像 ■森崎が演じるグリフィン・アルバレストは強い信念を持つ若きエース ――(取材当日は1月中旬)『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』公開直前です。現在の心境はどのようなものですか? いよいよこのときが来たか、と。ついに封切られるということで、ワクワクしながらも少し緊張気味の自分がいるというのが正直な感想ですね。 ――やはり出演作の公開前というのは緊張感があるものですか? そうですね。特にオープニングウィークは気になります。皆さんがどういう感覚で受け入れてくれるのか、気が気でないというか。 ――ひと足早く映像をご覧になった感想はどうでしたか? 実は仕事の関係でアフリカ滞在中に観たんですよ。『SEED FREEDOM』の冒頭でアフリカ辺りを思わせる台詞があって、まさにその台詞を受けながらアフリカで観るっていう。そうした縁を改めて感じたのと、3DCGが本当にすごいですね。作品全体としては“ガンダム”をそこまで追ってこなかった自分でも受け入れやすく、一方で今の社会に対して非常に深いメッセージ性を感じました。 ――森崎さんが演じるグリフィン・アルバレストはどんなキャラクターなのでしょうか? ファウンデーションという新興国家の若きエースの1人と言いますか、戦闘能力も非常に高く、強い信念を持って戦いに臨んでいる。自分が生きる意味を考えて戦う。そういう性格のキャラクターですね。 ■森崎の引き出しを瞬時に見抜き、引き立てた福田監督のすごさ ――グリフィンを演じるにあたって注意した点、参考にした映像などはありましたか? 初代の『機動戦士ガンダム』を観直しました。前に観たのがずいぶん昔なので記憶を手繰り寄せる意味で。なので、正直今回に繋がることが大きくあったわけではないですが、“ガンダム”の世界観を思い出したり、台詞の言い回しを確認したいというのがあって。やっぱり“ガンダム”のそういうのって独特じゃないですか。それに耳慣れをしておこうと思いつつ、だったらなぜ『SEED』を観直さなかったのか自分でも謎なんですが(笑)。性格的にルーツを探りたくなるんですよね。 そうした形で自分なりに準備はして臨みましたが、実際それが現場でどれだけ役に立ったかというと、ほぼ皆無です(笑)。声だけで全てを表現するというのは本当に難しい。保志総一朗(主人公キラ・ヤマト役)さんはじめ、皆さん色々なパターンですごい芝居をされて、僕は置いていかれないように出されるリクエストに応えていくのが精一杯。実写とは全然違います。 ――福田己津央監督とは、役や芝居についてどんなお話をされたのでしょうか? 休憩中、僕が1人でいたら隣に来てくださって。「自分では上から目線で強く発しているつもりでも、一生懸命すぎると逆に弱く感じたりするもんだよ」「実写だったら表情や動きで表現の幅を出せるけど、声だけ、耳だけで聴くとそういう音になりがちなんだよ」とか。そういうことをさらりと教えてくださったのが印象に残っています。音っていうのは自分が思っている以上に聴こえ方が変わるものなんだと知りましたし、力強く言えばオッケーなわけでもないんだということを学ばせてもらいました。 ――アドバイスの中身も実写とは違う感じですね。そういうところで感じる福田監督のすごさとはどういうものでしたか? 僕の勝手なイメージで、福田さんはけっこう怖い方なのかと思っていたんですよね。“ガンダム”という歴史あるシリーズの監督をされていて、僕なんかは特に声優の現場を分からない人間ですから。でもそんな雰囲気は全くなく、僕の持つものを瞬時に見抜いて、引き立てていく能力みたいなものがすごいと思いました。 正直比べるのもおこがましいですが、僕もWOWOWの『アクターズ・ショート・フィルム4』で監督をさせていただいているんですね。演出をする上で自分の持っていきたい画(え)に行くには役者の適性というか、その俳優さんにヒットするポイントを作る必要があると痛感しているんですが、僕はそれがまだ掴めず。やっぱり長く仕事をされている監督の技と言いますか、福田さんの技に乗せられている自分がいるのをすごく感じました。 ■作り手とお客さんを繋ぐ表現者としての自負 ――ガンダムシリーズは全世代熱狂的なファンが集まる作品ですが、その分、厳しく見るファンも多くいます。そういう状況にはどう向き合っていきましたか? 答え方がとても難しいのですが、僕らの作品作りやエンターテイメントってお客さんがいてのものなので、自分にできるベストを尽くすだけ、ですね。今回もそれはできたと思うので、あとは公開されて、皆さんにどう受け入れられるかだと思っています。それを経て、自分の成長にも繋がる言葉をたくさんいただけるだろうし、その中には厳しい意見もあるでしょうね。でも、それも僕自身の成長に必要な言葉ですし、覚悟はしています。 ただ、実写もそうですが、作っている瞬間はそういうことを考えてはいないです。僕は俳優として、監督、脚本家の意図などを汲み取って、それを伝えられるように全力で当たるだけ。ファンの目を気にして演技をすることはないですし、今回ではグリフィンが作品の中でどうすれば生きるか、ということだけに向き合いました。そこへの自負はありますし、オッケーを出してくれた監督への信頼もあります。それで受け入れられなかったら、「ごめんなさい」しかないですね(笑)。 ――作り手とお客さんを繋ぐ、表現を担う者としての自負ですね。 監督たちにはファンに向けての考えってたくさんあると思うんです。だけど、僕ら演じる側ってそこを考え始めると持っている信念が曲がっていくと思います。 ――予告映像でもあった「闇に落ちろ、キラ・ヤマト……」の台詞はとても印象的でした。 あれは多分、狙って書いているでしょうね(笑)。あの台詞は今回の大きなキーワードにもなっているので、公開を楽しみにしていてほしいです。素敵な台詞をいただけたと本当に感謝しています。 ――今回の『SEED FREEDOM』は、森崎さんの今後にどんな影響を与える作品になりそうですか? 自分の人生を変えてくれた『レディ・プレイヤー1』(2018年)。その中で縁を得た“ガンダム”の本家に携われたことは、ある意味で恩返しができた部分もあるのかなと勝手に思っていて。ただ、これがこの先どう影響していくのかは僕自身も分かりません。声優の仕事が増えるのかも分かりませんし。本当にやりがいのある現場だったのでまた挑戦の機会があればやりたい気持ちはありますが、やっぱり僕は実写の俳優で、そこの軸はこれからも変わらないと思います。それに、本職の皆さんに失礼だと思うんですよね。そういう意味で、声優の仕事をしたいというよりも、声優の仕事で得たことを俳優業に生かしていきたいと思っています。 ――声優の経験が生かされるシーンには、例えばどんなものがありそうですか? 特に舞台に繋がりますよね。舞台は後ろのお客さん、距離があって芝居があまり分からないというときがあると思います。そうしたとき、声の芝居で伝える技ってとても大事になりますし、声優さんが立つ舞台はすごく伝わります。そういう意味では、声優の仕事は自分の技術を上げて、引き出しを増やしてくれる現場です。僕としてはありがたい気持ちでいっぱいですね。 ■「俺はガンダムで行く!(※レディ・プレイヤー1)」を経て、オファーをもらえる俳優に ――今のお話で上がった『レディ・プレイヤー1』ですが、「人生を変えてくれた作品」というのはよくおっしゃっています。どのような転機だったのか、改めてお聞きかせいただけますか。 超分かりやすく言うと、『レディ・プレイヤー1』の前はオファー仕事はほぼなくて、ほとんどオーディションでした。『ごくせん』(2009年)や『仮面ライダーW』(2009年)みたいに幾つかキャッチーな作品への出演もありますが、それもオーディション。“森崎ウィン”へのオファーは全くない状態でした。それが『レディ・プレイヤー1』の公開が終わり、その後に日本アカデミー賞新人俳優賞を頂いた『蜜蜂と遠雷』(2019年)を経て、ようやく日本の作品の中でオファーをいただけるようになりました。アルバイトをしなくても、これだけで食べていけるという状態にやっとなれたのがそのときで、本当に分かりやすく人生が変わった瞬間でしたね。 ――オファーとオーディションでは同じ仕事でも全然違いますか? オファーってやっぱり、先方から“この人と仕事をしたい”と思ってもらえたということじゃないですか。一度出演してまた呼んでもらえるというのもそうですが、僕ら俳優にとってその評価をいただけるのはとても大きいです。 ――その繋がりの先で今回は『SEED FREEDOM』への参加が決まり、森崎さんとしても熱い想いがあったと思います。 ついにここに届いたという想いはありますね。しかも18年ぶりの最新作という特別な作品に呼んでいただけたのは本当に嬉しいし、それも『レディ・プレイヤー1』があったからだろうし。でも、それだけでなく、僕のしてきた仕事の1つ1つが繋がってここにきた。そういう自負もあります。 ――ちなみに、初めて声優の仕事をされたのは『海獣の子供』(2019年)でした。当時の心境は覚えていますか? 「俺はできる!」って思っていました。けど、できなかった(笑)。それもあって、声優さんって本当にすごいと思うわけですよ。 ■ガンダムは人間が生きる中の一番真ん中へのメッセージ。だからこそ世界で共感を呼ぶ ――ガンダムシリーズは今年で45周年。ハリウッドでの実写映画も進行中という、グローバルな作品になりました。国際的な感覚をお持ちの森崎さんから見て、どんな部分が海外でも人気を集めるポイントになっていると思いますか? 1つはモビルスーツの格好良さが挙げられますよね。もう純粋に格好良い。モビルスーツが戦うという未来の世界観もいいし、観ていてワクワクします。それに加えて、日本人にしか描けないアニメの強さ。絵力、動きの良さは日本独特なものだと思います。海外アニメと比べると日本のアニメって絵が本当に丁寧で、面白いです。 あとはストーリー。ここまで凝ったストーリーというのも日本ならではだと思うし、例えば『SEED FREEDOM』であれば現代の世界情勢に通ずる戦争へのアプローチ、人類共通の愛の話だったり、そういうメッセージを盛り込ませているところ。人間が生きる中の一番真ん中。土台に対してのメッセージというのは、国境、時代を越えて普遍的な共感を呼ぶと思います。だからこそガンダムシリーズは世界中、どの国の言葉で観ても通ずる作品なんだと思いますね。 ――では最後に改めて。ファンにメッセージをお願いします。 約20年の時を経ての新作。2時間超えの大作で、劇場で観る価値のある作品だと断言できます。“ガンダム”は知らないけど興味はあるというだけでも楽しめるので、そんなに構えずに飛び込んで観ていただきたいですね。大勢の方に観ていただければ僕らも報われるので、とにかく一度は劇場に足を運んでほしいです。
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