「顔も身体も口の中も大やけど。彼がとにかく憎いです」大阪「昏睡硫酸事件」被害者の告白
今年4月9日の昼、大阪・ミナミにあるラブホテルの浴室で橋本裕也さん(仮名・10代)は目を覚ました。服を着たまま浴槽に横たわっていた橋本さんの身体には、シャワーの水がかかっていた。自分はここで何をしているのか――。わけもわからずベッドに移動すると、周りにある鏡にパンパンに腫れた自分の顔が映っていた。顔が、腹が、口の中が、痛い。薄れゆく意識の中で救急車を呼び、警察病院に搬送された。再び目を覚ましたのは4月26日のことだった。 【画像】歪んだ愛情が悲劇を……事件の首謀者・阿部被告の素顔写真 約1ヵ月後の5月末、大阪府警は橋本さんに硫酸をかけ、やけどを負わせた殺人未遂の容疑で若林賢太郎被告(当時42歳)と当時17歳の少年AとBを逮捕。7月には事件の首謀者・阿部光平被告(当時31歳)を傷害などの容疑で逮捕した。 「実行犯は少年二人。ミナミのシンボルである『道頓堀グリコサイン』があるエリア、通称″グリ下″に集まる非行少年たちで、後に阿部被告から犯行の報酬として現金50万円を受け取っていたことがわかっています。橋本さんに危害を加えるよう阿部被告に持ちかけられた若林被告が、橋本さんと顔見知りだったAらに指示を下して睡眠薬を飲ませ、橋本さんを昏睡状態に。そして、顔や下腹部に硫酸をかけ、殺害しようとした疑いが持たれています」(全国紙社会部記者) 阿部被告らは、なぜ硫酸という劇物を使用したのか。その答えは阿部被告と橋本さんの関係性にあった。橋本さん本人はFRIDAYにこう経緯を明かす。 「僕とひかる(阿部被告)は付き合っていたんです。会ったのは去年の3月頃。僕は梅田の堂山(どうやま)にあるBarに従業員として入店したんですが、そこのオーナーがひかるで、若林は常連客でした。その年の6月頃に、僕とひかるは交際するようになった。しかし、彼は精神的に不安定で、今年の2月半ばには僕が友達と遊びに行ったのを知って嫉妬し、癇癪を起こして『別れる。店もやめてほしい』と切り出した。僕は言う通りにしたのですが、その後、何度もひかるから『復縁してほしい』と連絡が来たんです。僕はそれをずっと無視し続けていました」 そんな中、事件は起きた。 4月8日夜、橋本さんはAから遊びの誘いを受け、グリ下で合流する。この時すでにAは、若林被告らから橋本さんに危害を加えるよう指示を受けていた。 「Aは若林がかつて経営していたコンセプトカフェの従業員で、ひかるの店にも顔を出しており、そこで知り合いました。しばらく疎遠になっていましたが、久しぶりにSNSで連絡がきたんです」 橋本さんはAに誘導され、もう一人の実行犯であるBの働くカフェへと移動。ここでAたちは不審な動きを見せる。 「Bとは初対面でしたし、翌日も予定があったので帰りたいと告げると、Aらは『これを飲まないと帰さない』と青い液体の入ったショットグラスを出してきました。仕方なくそれを一気に飲み干した瞬間、意識をなくしました」 AとBは橋本さんを件(くだん)のラブホテルに連れ込み、硫酸をかけた。 「若林は、カフェの運転資金を、ひかるから借りていた。だから、11歳下のひかるに指示を出されても断れなかったのでしょう」 硫酸による顔、口、下腹部などのやけどは皮下組織にまで及び、医師からは症状として最も重いⅢ度熱傷と告げられたという。 「皮膚移植は半年に一度のペースでしか手術が受けられず、どれくらい治療に時間がかかるかわからない。阿部には激しい憎しみを感じています」 人を使って元恋人に一生の傷を負わせることを望んだ阿部被告。その独りよがりな愛情は満たされたのだろうか。 『FRIDAY』2023年12月29日号より
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