損壊して土のうが積まれている護岸＝七尾市和倉温泉

　　●旅館修繕に配慮 　能登半島地震で損壊した七尾市和倉温泉の護岸について、官民の復旧会議は26日、2026年度中に復旧完了を目指す工事計画を取りまとめた。県や市が被災した一部の民有護岸を取得した上で、工事を始める。護岸は震災前と同じ位置や高さを維持し、和倉の売りである海沿いの眺望を確保。魚が生息しやすい藻場も整備する。北陸を代表する観光拠点である和倉の再建が進むことで、奥能登への誘客に加え、金沢や南加賀など各地の観光振興にも弾みがつきそうだ。 　温泉地全体の復旧工事を短縮させるため、護岸は海側からの工事を基本とし、海際に建つ旅館・ホテルの修繕を並行して進められるよう配慮した。 　計画では、全長約3・5キロある護岸のうち、海際に旅館・ホテルが建つ1・8キロの沖合に積み上げた石の上に鉄板を敷く工法で幅10～15メートルの工事用道路を造成。海側から重機を投入して崩れた護岸や土のうを撤去し、新しい護岸を設ける。工事用道路に用いた石は海底に沈めて護岸を支え、藻場として活用していく。 　日本一のおもてなしで和倉の名を全国に轟（とどろ）かせた「加賀屋」など大きな旅館は海沿いに立ち、元日の地震でコンクリート製の護岸は崩落や亀裂が多数発生。所有者や管理者が民間と行政で混在し、宿泊施設の解体、修繕の足かせになり、5月から北陸地方整備局や北陸農政局、県、市、和倉温泉の関係者が復旧工事の計画策定を進めてきた。 　民間で護岸を修復するには多大な費用がかかるため、旅館側は県や市への「公共帰属」で一致。民有以外の市管理の護岸については、国が年内に権限代行での復旧に着手する。 　26日に和倉温泉で開かれた会議で工事計画が了承され、能登港湾空港復興推進室の美野智彦室長は「温泉の魅力を維持でき、一日も早い復旧復興に取り組む」と話した。旅館関係者は震災前と同じ景観が維持されることを歓迎し、和倉温泉観光協会の多田邦彦会長は「震災前よりも魅力ある和倉にしていきたい」と期待を込めた。