音楽教師の功績を伝えるコンサート（静岡県浜松市）

目の不自由な人が楽曲を演奏するのに役立つ点字楽譜をご存じだろうか？この点字楽譜の普及を目指すコンサートが静岡県浜松市で開かれた。出演した世界的に有名な全盲のヴァイオリン奏者も「音楽を志す視覚障がい者にとって入口になる」と普及を熱望する。 目が見えなくても見事な合奏　「点字楽譜」を広めた音楽教師の功績を伝えるコンサート

「最初に読んで頭に入れる」

2024年2月、静岡県浜松市で開かれたコンサート。 琴を演奏したのは岡井千春さんだ。目が不自由な岡井さんだが、壇上で他の10人あまりのメンバーと見事な合奏を披露した。

岡井千春さん（左から3番目）

岡井千春さん： 1行に2小節書いてあり、最初に2小節分を読んで頭に入れる。覚えたところを琴で弾いています

点字楽譜

演奏するために使っているのは”点字楽譜”。 点字楽譜とはドレミファソラシドの音符や休符などが点字で表されているもので、目が不自由な子供の教育などにも活用されている。

岡井千春さん

岡井さんは盲学校の高等部音楽科で点字楽譜を覚え、曲を忘れてしまった時に点字楽譜を読んで覚え直しているそうだ。

100曲以上の点字楽譜をデータ化

点字楽譜がない場合、目の不自由な人は聞いた音を覚えることで演奏することもできる。ただ、点字楽譜があれば聞いたことがない曲でも演奏が可能だ。

故・島津祐策さん

約20年前に浜松盲学校（現在の浜松視覚特別支援学校）で音楽教師を務めていた、故・島津祐策さんが100曲以上の点字楽譜をデータ化。 今回のコンサートは点字楽譜の普及に大きな役割を果たした浜松市ゆかりの島津さんの功績を伝えようと地元の障がい者支援施設が主催した。

データ化した点字楽譜（提供：NPO法人 六星）

NPO法人 六星・斯波千秋 代表理事：　 島津先生の偉業、素晴らしい仕事は点字楽譜をデータ化して保存したこと。全国の人が図書館に申請すれば借りることができる。みんなが平等に使えるようになった

ヴァイオリン奏者・和波孝禧さん（左）

また、コンサートでは全盲でありながら世界的に有名なヴァイオリン奏者であり、島津さんとの親交も深かった和波孝禧さんも演奏を披露した。 来場者は「目が見えないのに覚えて弾けるのがすごいと思った」「点字楽譜をすべて覚えて演奏するプロセスはインパクトがある。勉強になった」と話す。