青森県内のナラ枯れ6万1217本、過去最多 前季比2.5倍、下北地方で初確認
ナラ類が枯れる「ナラ枯れ」について、青森県は30日、今季(2024年7月~25年6月)の県内被害木が10月時点で前季比約2.5倍の6万1217本に上り、過去最多となったと明らかにした。これまで被害のなかった下北地方など12市町村で初めて確認され、県内自治体の半数に当たる20市町村にナラ枯れ被害が拡大。専門家は22、23年の暖冬少雪傾向により、病原菌を運ぶ虫が死ななかったことが主な要因と指摘している。 県が県庁で開いた対策検討会で被害状況を報告した。 県林政課によると、ナラ枯れは病原菌がカシノナガキクイムシ(カシナガ)によって運ばれることで感染する。比較的高齢で大きな木が被害を受けやすく、感染したナラは紅葉前に赤褐色に変色し数年後には朽ち果てる。ナラ枯れによって森林の景観が損なわれることに加え、木材価値が下がって林業者の収入減につながるほか、倒木や土砂崩れの危険性も高まるという。 民有林、国有林ともに被害が出ており、内訳は深浦町が3万9404本と最多で、中泊町8327本、鯵ケ沢町6687本、五所川原市2306本と続く。西北地方に集中している一方、前季まで発生していなかったむつ市や佐井村など下北地方にも新たに被害が及んだ。 対策検討会で山形大学農学部客員教授の齊藤正一氏は22、23年冬の気象データを示しながら、1~3月にかけての高温傾向と少雪から、本来は寒さで死んでしまうカシナガが冬を越えた可能性を指摘。また23、24年夏の猛暑でナラが衰弱したことや、カシナガが羽化する時期に強い南西風が長く吹き、生息域が県内の広範囲に拡大した可能性が高い-との見方を示した。 齊藤氏は「おとり丸太」を設置してカシナガを誘引するなど対策を講じれば、一定の被害を食い止められると説明。他県の事例を紹介しつつ「国有林だ民有林だと分け隔てて考えると、ナラ枯れはあっという間に広がる。岩手県北でも既に被害が出ており、三八地域でいつ発生してもおかしくない」と警鐘を鳴らした。 県は今季の被害拡大を受け、天然記念物や海岸防災林といった特に保全が必要なナラを中心に防除するなど対応を見直す方針。県林政課の工藤真治課長は「気候変動の影響もありナラ枯れの根絶はかなり難しい。高齢木の伐採を進めてナラ林を若返らせるため、家具材などの原料として利活用を図っていく」と述べた。