習政権「静かな戦争」有事の〝事前準備〟「ミラーフェース」が日本のインフラにサイバー攻撃、台湾で解放軍10万人引き入れ画策
中国の習近平政権が「静かな戦争」を日本や台湾に仕掛けている。警察庁は7日、2019年から24年にかけて中国のハッカー集団が日本の安全保障や先端技術を狙い、210件のサイバー攻撃を実施していたと発表した。台湾では、中国側と通じた退役軍人が、中国侵攻時の武装蜂起を計画した罪で起訴された。中国人民解放軍10万人を台湾に引き入れることも画策していたという。 【比較してみる】中国と台湾の軍事力 警察庁によると、日本をサイバー攻撃したのは中国の「ミラーフェース」と呼ばれる組織だ。防衛省や外務省などの政府関係者やシンクタンク、政治家、記者、先端技術を有する民間企業、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が対象となった。 ミラーフェースが使うマルウェア(悪意あるソフト)が、中国国家安全省とつながりがあるとされるハッカー集団「APT10」のものと類似しており、国家が関与する犯行の疑いもあるという。 中国の情報収集活動に詳しい日本カウンターインテリジェンス協会の稲村悠代表理事は「権威主義国家は、民主国家と比べてアグレッシブに諜報活動を展開しやすい。実践を重ね、能力を向上させていると考えられる。米領グアムの米軍基地でインフラに中国のマルウエアが組み込まれていた事例もある。日本も気付かないうちに基幹インフラに侵入されている可能性もある。インフラの役務停止や、復旧不可能になるほどの最悪のリスクも想定され、近年経済安全保障推進法を軸に対策を推進しているところだ」と指摘する。 「台湾有事」に向けた工作も発覚した。台湾の検察当局が昨年8月、中国の台湾侵攻に合わせて武装蜂起を行う組織の育成を計画したなどとして、台湾の退役軍人7人を国家安全法違反罪などで起訴した。台湾メディアが伝えた。 中央通信社によると、主犯は台湾陸軍を佐官級で退役した屈宏義被告(62)。19年に中国人民解放軍の関係者と知り合い、中国側の資金提供を受けて「統一作戦行動」に呼応する武装勢力の育成を始めた。 レーダー施設や基地などの軍事施設や米国の台湾窓口機関、米国在台協会(AIT)台北事務所の写真や地理情報を中国側に送信するなどしていた。台湾紙によると、屈被告らは「中国人民解放軍の10万人を台湾に引き入れる」ことも画策していたという。
元陸上自衛隊中部方面総監の山下裕貴氏は「中国は建国100周年となる2049年を目指し、着々と準備を進めている。日本に対するサイバー攻撃も、有事の際にどう動くかを情報収集している側面もあるだろう。今回、中国側は情報収集能力を誇示するために、あえて発信元が分かるよう活動した可能性もある。露呈しているのは氷山の一角ではないか」と強調した。