新羅琴、日韓交流の賜物…朝鮮半島から伝来の伽耶琴と同じ起源
奈良国立博物館(奈良市)で開催中の「第76回正倉院展」(特別協力・読売新聞社)に出展されている弦楽器「 新羅琴(しらぎごと)」は、韓国を代表する伝統的な民族楽器・ 伽耶琴(カヤグム)と同じ起源を持つ。韓国に1000年以上前の古い伽耶琴は残っておらず、伽耶琴奏者らも注目している。(橿原支局長 関口和哉)
新羅琴は古代の朝鮮半島・新羅から伝わった音楽「新羅楽」に用いられた12弦の琴。弦を固定させる「 緒留(おどめ)」が、特徴的な羊の耳形をしている。正倉院宝物の目録「 国家珍宝帳(こっかちんぽうちょ)」に2件が記されているが、いずれも平安時代の823年に出蔵され、2か月後に別の琴が代納された。そのうち1件が今回の正倉院展に出展されている。
伽耶琴は、3~6世紀に半島南部にあった小国群「伽耶」で作られ始めた。伽耶が滅んだ後も新羅で使い続けられた。韓国・慶州の6世紀半ばの古墳から出土した装飾 壺(つぼ)に伽耶琴を弾く男性像が表されている。
現在伝わる伽耶琴は「新羅琴」と同じ12弦で、緒留の形は違う。指を使って演奏し、繊細な音色がする。奈良時代に新羅を通して日本に伝わった伽耶琴が、「新羅琴」と呼ばれるようになったと考えられている。
韓国・全羅南道出身で大阪市在住の伽耶琴奏者、 元京愛(ウォンキョンエ)さん(68)は「正倉院に古い伽耶琴が伝わっていると知り、驚いた。古代からの韓日交流の 賜物たまもの 。ぜひ正倉院展を訪れ、現物を見てみたい」と話している。
◆古代の朝鮮半島= 4~7世紀、朝鮮半島は東部の新羅、西部の百済、北部の高句麗の3国が分立し、 倭(わ)(日本)を巻き込んで抗争を繰り広げ、三国時代と呼ばれた。南部の伽耶( 任那(みまな))は、倭と活発に交流していたが、562年に新羅に滅ぼされた。