「まずは強気で」黒星スタートの中で見えた光明 流れを変えた和田由紀子がメダル獲得の鍵になる【パリ五輪】
パリ五輪でメダル獲得を目指す女子バレー日本代表の戦いが始まった。現地7月28日のプール戦初戦で対戦したのはポーランド。圧倒的な高さとパワーを持ち味とする相手に日本は1-3で敗れて黒星スタートを喫したわけだが、そのなかでも途中交代で入った和田由紀子は光明となった。 【画像】エアコンなしの質素なデザイン? パリ五輪選手村の全容をチェック 各々が最大限に持ち味を発揮し、それが融和し、一つのチーム力を生む。世界と比べて、高さとパワーで劣る女子日本代表が戦ううえで欠かせない要素だ。 そのなかでも和田の持ち味は“思いきりのよさ”。前衛だけでなくバックライトから跳び上がると、切れ味鋭いアタックを突き刺す。エンドラインに立てば、ドライブサーブが火を吹く。そんな和田の姿が、さっそくパリの大舞台で見られた。 ポーランド戦ではベンチスタートとなった和田だが、第2セット終盤にリリーフサーバーとして投入され、パリ五輪初サーブを打ち込む。ここは相手に切り返されてお役御免も、続く第3セットは3-9とポーランドに大きくリードされた場面で、林琴奈に代わって送り込まれる。やがて6-11の場面でライトからスパイクを打ち込み、初得点をマークした。 途中出場にも関わらず、第3セットはチーム最多の8得点。第4セットは開始時からコートに立ち、終わってみれば古賀紗理那の26得点、石川真佑の16得点に続くチーム3番目の13得点、と五輪デビュー戦としては上々だろう。和田は大会前、パリ五輪では「チームの流れを変えたり、勢いづける役割ができたらいいな」と口にしており、敗れる結果になったとはいえ、その言葉どおりチームにエネルギーをもたらしたのは明らかだった。 特筆すべきは、これが初めての五輪、ましてやシニアの日本代表はまだ2年目だということ。それなのに、その姿は堂々とし、“怯む”“臆する”なんて言葉とは無縁のごとく、腕を振り抜く。思えば、和田にとってそれは、初めて日本代表に選ばれたときから変わらぬ思いを体現しているに過ぎなかった。 1年前の春、代表シーズンが始まったばかりの和田は、代表活動の雰囲気に緊張を抱きつつも、こう力強く口にしたもの。 「すべてが自分にとっては初めてなので。自分にできることをまずは思いきりできるように意識しています。ただ、まだ全部出しきれているわけではないと思うので。いいプレーにこだわるよりも、まずは強気でどんなプレーもしていきたいと考えているんです」 日の丸をつける資格を得たときから、和田は自分の“思いきりのよさ”をぶつけることを念頭に置きながら、一歩ずつ踏み出してきたのである。 そもそも日本代表を目標に据えたのは高校を卒業し、Vリーグに進んでから。本人が明かすに、遠い先を見据えるのではなく、身近な目標を一つずつクリアしながら、こつこつとステップアップしていく性分であり、日本代表も同様だった。 「小学生の頃は全国大会に出る、中学生は県選抜になる、とか。『トップになる』とは考えていなかったですね。そこで目標に近づいたら、『その先にはこんな世界があるんだな』と知って、また次の目標を設定する、という具合です。 日本のバレーボール界でいえばVリーグがトップのカテゴリーになると思うので、そこにいく以上は、目標を少し高く持っていたかった。となると、シニア(日本代表)を目標にしたいなと思ったわけです。 まずは日本代表の12名に選ばれること、が目標です。パリ五輪で優勝やメダル、というまでは考えられていません。でも、いつか選ばれたときには、そういう目標も考えながら、国を背負って戦える選手になれたらいいなと思いますね」 そう明かした代表初登録時から1年と少し。今、和田は12名に選ばれ、パリ五輪に臨んでいる。 「自分の力がどれだけ通用するか」を考えて始まった戦いで、まずは出番が与えられ、そこでは初めての得点も記録した。次は初めての勝利を、その次は初めてのメダルを。日本代表の一員として、和田は一つずつ目標をクリアしていくだろう。そうして彼女のシンデレラストーリーは綴られるのだ。 [文:坂口功将]
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