「私ってゴリラだからさ」発言の裏には…芸大生が〝ゴリラ女学院〟構想した理由 「生態に沿った本物に」
大事なのは、ゴリラへのリスペクト
戸澤さんに、作品をつくるときに気をつけたことを聞くと、「実現しそうなリアリティを持つこと」だと答えてくれました。 例えば、「ゴリ女」のリーダーとなる学生が身に着ける「シルバーバック制服」。 ゴリラの群れでは、オスゴリラが成長すると背中が銀白色になるため、リーダーは「シルバーバック」と呼ばれています。この身体の変化を制服にあてはめました。 作品でつくった動画に登場する学生リーダーも、「力強く引っ張っていく」というよりも、ゴリラの生態にあわせて「自然体で周囲がついていきたくなるようなタイプの生徒」をイメージしたとのことです。 より現実にありそうな学校にする、と同時に、ゴリラのインパクトを借りた作品である以上、ゴリラへの敬意を忘れないということをポイントにしたといいます。 「ゴリラの学校ですって言って、挨拶はウホウホですとか、給食がバナナですとかじゃ台無し。表面的な特徴ではなくて、ゴリラの行動から学ぶことが大切なんです」 構想を進めていくうちに視野も広がっていったといいます。 秋にあった学内の講評では、ちょうど中高生の子どもがいる教授たちから「ゴリラに育てる学校に、うちの娘が入ったらどう教育するわけ?不安で入れたくないなあ」という意見も出たそうです。 これまで「こんな学校があったらいいな」という生徒の視点で向き合っていたので、「親から見ても『信頼して娘を入れたい』と思えないと」と考え、教育内容を明確にして作品を深掘りしていったといいます。
リアルを追求 校章やリーフレットも
作品に向けて、校章やリーフレットもつくりました。作成したリーフレットは1週間の展示期間で2000枚近くが来場者の手に渡り、制服にも「かわいい」という来場者も多かったそうです。 来場者から寄せられたコメントでは、ジェンダーの研究者やゴリラの動画をYouTubeにアップする人、女性のほか男性からも共感の声がありました。 「女子のエンパワーメントの作品なんですけど、興味を示す男性も多かった。女子校を知る人だけが共感して、ほかの人が置いていかれるという作品にならなくてよかったです。男子校出身の人が共感してくれたりもして、結果的にさまざまな立場からみて共感ポイントのある作品になったかなと感じています」