【ボクシング】ユーリ阿久井政悟、34年前に岡山の先輩辰吉丈一郎がKO勝利した東京Dで初防衛
<ボクシング:WBA世界フライ級タイトルマッチ12回戦>◇6日◇東京ドーム 王者ユーリ阿久井政悟(28=倉敷守安)が3-0回判定で初防衛に成功した。ジャッジは117-111が2人に118-110と大差をつけた。 3年前に日本王座をかけて戦った桑原拓(29=大橋)との再戦で、返り討ちに成功した。ベルトをとるより難しいとされる初防衛戦。岡山のジム所属で初の世界王者となったユーリ阿久井が、その重たいプレッシャーもはねのけた。 【写真】勝ち名乗りを受け、ガッツポーズ! ◇ ◇ ◇ 王者らしい戦いを展開した。1月にアルテム・ダラキアン(ウクライナ)からベルトを奪った時のようなアグレッシブな戦いは封印した。ユーリ阿久井は、桑原の動きを見極めて12ラウンドを支配した。 「1ラウンドに効いたパンチ(左フック)があって危ないと思ったけど、今日は僕の日でした」 桑原は21年7月に日本王者として挑戦を受け、退けている相手。約2年10カ月ぶりの再戦で、気持ちの余裕があった。前日計量後も「立場も実力差も何も変わっていない」と言った。その言葉通りの圧倒。「もうちょっと世界タイトルをとるという思いで(攻めて)来てほしかった。友だちとして思う」と振り返れるほどだった。 舞台は東京ドーム。8年ほど前に、妻の夢さんがファンというスーパーエイト(当時関ジャニ∞)のコンサートで初めて訪れたという。「野球選手はここでホームランを打つんだと広さにビビった。自分がそこで試合をするとは思ってもいなかった」。34年前には同じ岡山・倉敷市出身で大尊敬する元WBC世界バンタム級王者の辰吉丈一郎がプロ2戦目で立ち、ワンパンチKO勝利でカリスマ伝説の序章をつづった。「場所は関係ないと思っていた」と言いながらも、王者には格別な思いもあった。 岡山のジム所属で初めての世界チャンピオン。王座獲得後は、地元マスコミに引っ張りだこで多忙を極めた。その期待の大きさは当然、プレッシャーとして背中に負った。守安竜也会長(70)も「緊張はありますよ。負けられない思いは誰よりも強く持っていた」と明かす。あらゆる重圧に打ち勝った。 ユーリ阿久井は今後について、年内でのもう1戦を示唆しつつ「ちょっと休みたいですね。家族ともゆっくりしたい」。岡山から誕生した世界王者が、最初の“鬼退治”を成し遂げた。【実藤健一】 ◆ユーリ阿久井政悟(あくい・せいご) 1995年(平7)9月3日、岡山県倉敷市生まれ。リングネームのユーリは先輩から顔が元世界王者勇利アルバチャコフ似と指摘されたことから。中学2年からボクシングを始め、倉敷翠松高2、3年時に国体8強。環太平洋大に進学しアマ戦績20勝7敗。14年4月プロデビュー。19年10月に日本フライ級王座を獲得し3度防衛。プロ戦績は20勝(11KO)2敗1分け。身長163センチの右ボクサーファイター。家族は夢夫人と2女。