ついに習近平が「軍粛清の本番開始」を宣言…!腐敗問題の「絶望的な根深さ」強調の重要講話の中身と毛沢東への道
毛沢東にならった党内粛清の開始
それと関連してもう一つ、習主席が講話の中で、10年前開催の「古田全軍政治工作会議」に言及したことも注目すべきだ。2914年10月、党と軍のトップになった2年後の習主席が、福建省の古田村という毛沢東紅軍ゆかりの地で習政権下初めての「全軍政治工作会議」を開いた。実はそれは、同じ年から始まった「習近平軍粛清」の推進会議でもあった。 実際、会議前の14年6月、軍事委員会元副主席の徐才厚が粛清され、会議後の15年4月、元軍事委員会第一副主席・制服組トップだった郭伯雄が粛清の憂き目にあった。そしてそれを持って習主席による第1回目の大規模な軍粛清は終了した。 したがって、その10年後に開かれた今回の「全軍政治工作会議」はまさに、習主席による2回目の本格的な軍粛清のための動員会議と見て良い。彼は10年前と同じようなことを、もう一度やろうとしているのである。 さらに、今回の全軍政治工作会議の開催場所が延安に選ばれたことにも大きな意味がある。1942年、延安を本拠地とする中国共産党は、毛沢東の指揮下で「延安整風運動」と称する党内粛清運動を展開し、毛沢東本人の独裁的地位はこれで確立された。 こうしてみると、習主席が延安を今回の工作会議の開催地に選んだ理由はやはり、かつての毛沢東にならって粛清運動の展開によって自らの独裁地位をより一層固めることにあろう。
彭麗媛夫人の軍内地位向上のために
昨年7月から、習主席がロケット軍の前司令官・元司令官、そして中央軍事委員会装備発展部の主要幹部、国防大臣などを対象に粛清を行ってそれが一段と終わったかと思われるが、今から見てれば、これまでの粛清は単なる序曲、これからはまさに、本番としての軍粛清が大々的に展開されていく見通しだ。 こうなったことの背景には、「根深い問題」という習主席自身の言葉で示されているような、中国軍における腐敗問題の絶望的な根深さと、習主席の軍支配に対する軍全体の抵抗感があると思われる。 もう一つ、以前このコラムでも取り上げた「習主席夫人の軍人事関与」が事実であれば、今からの軍粛清展開は夫人の意向も反映している可能性もあろう。つまりこれからの粛清は、軍における夫人の地位確立のための「障害物一掃」となるのである。 今後、習近平の軍粛清はどのような規模、どのような形で展開されていくのかが注目したいところだが、粛清運動の展開によって習政権の台湾侵攻が大幅に遅れるようなこととなれば、我々としては大いに歓迎すべき事態であろう。
石 平(評論家)