堀ちえみ、がんで舌の6割以上を切除で「『イス』の2文字がうまく言えなかった」 苦悶のリハビリに涙
――根気が必要なリハビリですね 今まで言えていた言葉が言えなくなることは、想像以上に辛かったです。単語、文章を練習した後に絵本を音読することになったんですけど、子どもに読み聞かせをしていた自分がまさか絵本を使うことになって……。想像もしていなかったので、このときは涙が止まらなくなりました。 ――口腔がんの診断を受けたのが2019年2月でした 半年前に舌の裏側に小さな口内炎ができたのですが、そのときは持病のリウマチ治療薬の副作用ではないかと診断されました。健康には人一倍気を遣ってきたつもりです。毎年人間ドック、婦人科検査、脳ドックを必ず受けていました。でも、このときはご飯が食べられないし、水も飲めない。口をすすいだだけでズキーンときて、寝ているときも痛くて目が覚める。激痛が続く中で夜中に目が覚めたとき、「舌の口内炎、治らない」というワードで検索したら、「舌がん」と出てきて。 私の舌の症状と同じ画像がたくさんあって、「リンパに転移」と書いてあるのを見つけたんです。自分の首を触ったら付け根に大きなしこりがあって、「あっ!」って。後日、大きな病院で簡易検査を受けたら悪性と出て、舌の状態がステージ3、リンパ転移が見られるのでステージ4のがんだと言われました。 ■「生きているのも不思議だよね」 ――告知を受けたときはどんな気持ちでしたか 驚きはなかったです。すごい痛みで微熱も続いていたので、「生きているのも不思議だよね」と冷静に受け止めている部分があって。「5年生存率」が高い選択肢で手術を受けることになりましたが、不測の事態を考えて身辺整理をしました。家の中を断捨離して、それまでは夫婦が別々にそれぞれ管理していた銀行口座を、主人に全て任せて。暗証番号やパスワードなどもすべて伝えました。 ――手術が成功した後の精神状態はいかがでしたか 病院を退院して自宅に戻ると、昼は主人が仕事に出掛けて、子どもたちも学校に行くので1人になります。そうなると、まったく違う2つの感情が芽生えるんです。1つは、目に映る風景が何を見ても美しいし、耳を澄ましたら空気の音を感じられて、「生きていることはなんて素晴らしいんだろう」と感謝の思いです。 もう1つは、それと正反対に「どうして私が病気になったんだろう」「何で生きてしまったんだろう」という感情も出てきて。負の感情に必死に蓋(ふた)をしようとしても出てしまう。家族がこの様子を見ていて、「このままではもったいない生き方をしてしまう」と芸能界復帰を目指すことを提案してくれました。発声法のリハビリは目標があったほうが進むし、やる気が起きるんじゃないかと。