〈50年の歴史が今年で消えるかも…〉新宿にある奇抜すぎるデザインの「軍艦マンション」が迎える危機
新宿の隠れた名所が、密かな危機を迎えている。 その名所は、新宿・大久保一丁目に軍艦のような形をした、奇妙な見た目をしているビルだ。そのマンションは「軍艦マンション」と呼ばれ、新宿の職安通り沿いに50年以上も存在しているが、今年に入り解体の話が進んでおり、その存在に改めて注目が集まっている。 〈写真〉ちょっと怖いかも…軍艦マンションのエントランスにある絵 ビルの名称にもなっている軍艦のような屋上部分は、他の建物にはない独特の雰囲気を醸し出している。グレーの外装と軍艦の艦橋のような特徴的な外見。築年数は古く、新宿にある廃墟のような建物として今も残っている。 このビルの正式な名前はGUNKAN東新宿ビル。’70年に竣工したビルで、元の名前は、第3スカイビル、ニュースカイビルである。設計したのは渡邊洋治氏。元陸軍の船舶兵ということもあってか、このビルにはその影響を感じさせる独創性が出ている。 現在の名前に変わったのは’11年、リノベーションによってビルの内装や外装、名前が現在のものに変更された。14階建てのこのマンションは、部屋の一つ一つが外部にせり出した形をし、エビの尻尾のようなフロア構造となっている。 各階のY字状の廊下から6畳の鉄製居住ユニットが150基取り付けられ、デザインのイメージを追求した結果、横向きに受水槽を取り付けるなど、随所にこだわりが見られ、普通のビルとは全く違う「異端」ともいうべき存在感がある。 このような奇妙な建築物について、新宿にいる人はどう思っているのか。新宿に20年以上暮らし、軍艦マンションへの入居も検討したことがあるという男性(43)に話を聞いた。 「昔、興味本位で借りようとしたことがあって、物件案内を調べました。リノベーション前だったので、今よりもっと古い建物でした。各部屋にトイレがなく、よほどデザインに惹かれた人でないと住みたいとは思わないんじゃないかなと思います。私のイメージとしては、古い建築が好きな、デザイン、アート系の人が使っているマンションですね」 トイレも共同となると、人を選ぶ物件になるが、このマンションが建てられた’70年という時代背景を考えると、トイレが共同のビルであることも納得がいく。 ’11年のリノベーション時、「再出航イベント」と銘打って、写真家、イラストレーター、デザイナー等、様々なクリエイターを集めて展示会を行っていた。当時のレポートには来場者は1000人と書かれており、マイナーな催しにもかかわらず、ビルの人気が伺える。 現在でも、マンションの入り口の壁にはイラストが描かれており、空間として存在感のある場所である。 取材・文・PHOTO:白紙 緑
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