作家・川内有緒さんらドキュメンタリー映画制作 〝ロッコク〟沿いが舞台、食に切り口に暮らし描く
いわき市ゆかりのノンフィクション作家、川内有緒(ありお)さん(52)と映画監督の三好大輔さん(52)が、福島県浜通りの国道6号(通称=ロッコク)沿いを舞台にドキュメンタリー映画「ロッコク・キッチン」を制作している。食を切り口に人々の暮らしをひもとこうと、2人が地域を巡りながら撮影を進めている。川内さんは「戻ってきた人も新しく来た人も、ここにはいろんな人の暮らしがあることを伝えたい」と話す。 川内さんは、母がいわき市出身の縁などで、同市の会社役員志賀忠重さんと中国の現代美術家蔡国強(さいこっきょう)さんの交流を描いたノンフィクション書籍「空をゆく巨人」(集英社)を2018年に出版した。取材で同市と関わる中で、双葉郡も訪れるようになったという。 東京電力福島第1原発事故による避難から住民の帰還が進み、双葉郡に家の明かりが増えていく光景を川内さんは見てきた。同時に原発事故による農水産物の出荷制限や、処理水の海洋放出など食に関する問題が浮き彫りになる中で「人はみんな何かを食べないと生きていけない。ここで暮らす人の食の日常を知りたいと思った」と映画制作のきっかけを語る。 浪江町の地域映画「よみがえる浪江町」(2014年制作)を撮影した三好さんと組み、23年から双葉郡を中心に住民への取材や撮影をスタートさせた。一方、地域を巡る中で、更地や空き家となったままの場所も目の当たりにし、「ここにも誰かの暮らしがあったはず。震災前の食卓の風景はどんなものだったんだろう」との疑問も湧いた。今の食卓の風景だけでなく、過去の食に関するホームムービーも集め、映画に盛り込むことを決めた。 12月14日には、浪江町の道の駅なみえで、震災前の食に関する映像の収集イベントを開いた。持ち込まれた映像と電子メールで送られてきたデータを含め約50件が寄せられたという。 川内さんは「ここに誰かの暮らしがあったこと、今の日常があること、そして暮らしが続いていることを映像で残したい」と思いを語る。 映画は2025年中の完成を目指している。1月25日には寄せられた食に関する震災前の映像の上映会を、南相馬市のおれたちの伝承館で開く。参加無料。時間は午後4時~同7時。
福島民友新聞社