乗っ取り危惧に相場高騰懸念も。外国人による不動産購入は規制すべき!?
こういったことを危惧する多くの方は、日本の不動産の帰属について多少誤解しているのかもしれない。 日本の不動産の所有権が日本人以外のものであったとしても、そこは日本の領土内である。日本の主権が及び、日本の法令が適用される。そして何よりも、多少の問題はあるにせよ、日本はれっきとした法治国家である。仮に悪意のある外国勢力に特定地域の大部分の土地を取得されたとしても、その場所を乗っ取られるわけではないのだ。例えば、タワマンを取得した外国人が「管理費や修繕積立金なんて払いたくない」とゴネたとする。そんな場合は、裁判所にその住戸の競売を申し立て、競落額から管理費等の未収金を回収できる仕組みがこの国では機能している。日本は、権限を持った役人や政治家に賄賂を渡せばだいたいのことはOK...なんてルールがまかり通るような国ではない。 現在、東京都心におけるマンション市場では中華系の外国人が「買い手」としてそれなりに目立っている。東京のマンション価格はニューヨークやロンドン、パリ、あるいはシンガポールや北京、上海と比べても割安だとされる。折からの円安も、彼らのモチベーションを高めている。 ■外国人も不動産購入可能なのは日本だけ? 「外国人が日本で不動産投資をすることによって相場が上昇し、住宅を必要とする日本人に手の届かないものになるのでは?」という指摘もある。しかし、不動産市場における外国人のプレゼンスは高まっているとはいえ、主役というわけではなく、「クセのあるわき役」レベル。そもそも彼らに相場を握られるほど、日本の不動産市場は小さくないのだ。 そもそも日本全体の不動産市場からみれば、外国人の購入が目立っているエリアはほんの一部に過ぎない。それに、彼らが日本に永住して子どもをこの国で育てでもしない限り、いずれは売却するはずなのだ。 外国人の不動産取得に対する漠然とした不安を背景に「外国人が自由に不動産購入できる国は、世界に日本だけ」などという説も飛び交っているが、これは全くのデマである。 発展途上国には外国人の不動産取得を規制している国が少なくないが、アメリカやカナダ、EU諸国の多くは原則、外国人でも不動産の取得が可能だ。ギリシャやポルトガルは、不動産投資をした外国人に永住権を付与するという誘致策もあるほどだ。 十分な資力がある人が日本での不動産購入を望むなら、国籍問わず買えばいいし売ればいい。それが市場経済の基本である。さらに、あらゆる類の規制は市場原理を歪めるということも忘れてはならない。 文/榊淳司 写真/photo-ac.com