両腕で歩くミャンマーの牧師と合気道開祖の「最後の内弟子」 Vol.30
DOMOレストラン
DOMOレストランは、米国で権威あるレストラン・ガイド・ランキングブック『ZAGATS』(2001年版)で、全米での魅力的日本レストラン「内装の部」で、約6000軒のレストラン中トップに選ばれ、その後、毎年のように上位にランクされるようになった。 また、コロラド州および周辺諸州(150店余)におけるレストラン総合評価として、DOMO開店以来連続でトップレストランに選ばれている(ウエストワード紙)。 日本的田舎風情の外装内装と本格的日本庭園、そして居酒屋風料理を提供するDOMOレストランは、それまでの日本レストランとは全く趣を異にしていた。 たとえば、このレストランではテーブルに醤油を置かない。それだけでなく塩やコショウ、あるいはソースなどの調味料も一切置かないのだ。 DOMOレストランの特徴は、昆布や煮干しなどでダシを取る日本の伝統的な調理方法である。野菜類を豊富に使い、白米に加えて玄米ご飯も用意するなどヘルシー志向のメニューが多い。鍋物は豆乳を使ったDOMOオリジナルの健康鍋だ。 そんなオリジナリティ溢れる日本料理に本間がたどり着いたのは、デンバー貧民街でのアパート管理人時代の経験からだった。東南アジアの難民たちと、そして道場のアメリカ人の弟子たちと同じ釜の飯を食べた。その時、その料理を作っていたのは本間自身である。「毎日食べさせる彼らに、飽きさせない料理を作らなければならない」。本間はそんな思いで、乏しい食材を創意工夫しながら調理していたのだ。
スタッフの多様性
DOMOレストランのもうひとつの特徴は、コックをはじめとする従業員の多彩な人種構成にある。ほとんどが東南アジア難民の親を持つ子弟で、米国生まれのアジア人や難民認定で米国に帰化したアジア人である。山本が日参していた頃のコックはモンゴル人、ネパール人、ベトナム人そしてミャンマー人の4人であった。 前述したネパール人コックのダワは先祖代々シェルパであり、彼自身も以前はシェルパだった。伝統的なシェルパの職域はいくつかに分かれており、ダワは料理担当のシェルパであった。 国際色豊かなアジアの国々のコックがいると、それぞれの国の郷土料理をいつでも食べることができる。ウェイトレス、ウェイターは中国人、ラオス人、モン族(ラオス山岳民族)、モンゴル人、ベトナム人、ミャンマー人等だ。この従業員達の親もまた、その多くが米国への難民であった。 フロアマネジャーのシンディやウェイトレスのマエバやアナは、アメリカ生まれのモン族。米国で教育を受けた彼女たちはDOMOレストランで働きながら大学へ通っている。苦学するそんな彼女たちに本間は奨学金まで出していた。
Project Logic+山本春樹