双葉町で開かれる花火大会のイメージ。中央下の建物が東日本大震災・原子力災害伝承館（ＮＰＯ法人県クリエイターズ協会提供）

　東日本大震災の津波と東京電力福島第１原発事故で甚大な被害を受けた双葉町中野地区で９月２８日、大規模な花火大会「双葉花火」が初めて開かれる。被災地の活性化につなげようと、福島煙火（えんか）協会が主催する。県内外の花火師が約５千発の大輪の花を咲かせる。町民らが出店を出し、裏方として支える。協会は継続開催を目指し、双葉地方の新たな観光資源としたい考え。イベントを通じて地元以外の人たちが震災関連施設などを巡る機会をつくり、浜通り全体の関係人口拡大にもつなげていく。 ■５０００発、古里の新名物に　浜通り誘客につなげる 　１９日、町産業交流センターで福島煙火協会長の糸井秀一さん（４４）＝須賀川市、糸井火工＝ら関係者が集まり、花火大会の準備を進めた。「多くの人を呼び込むためにはどうすれば良いか」。成功を誓い、活発に意見を出し合った。 　センター近くの海沿いで打ち上げる。いわき市のいわき花火大会や須賀川市の釈迦堂川花火大会と同程度の規模となる。県内外の花火業者計約２０社が花火玉を作り、震災と原発事故からの復興への歩みを多彩な色や形で表現する。東日本大震災・原子力災害伝承館の外に有料席を設け、ゆっくり観賞できる環境を整える。

花火大会の成功を誓い、準備を進める（前列左から）田中さん、糸井さん、高倉さん、福田さん

　糸井さんは伝承館の外で毎年３月１１日に打ち上げる「追悼の花火」を担当してきた。大勢の人が目を輝かせながら空を見つめ、地域の復興を願う姿が脳裏に焼き付いていた。「いつか双葉で本格的な花火大会を開きたい」。強い思いを抱いてきた。 　町は２０２２（令和４）年８月に一部地域で原発事故に伴う避難指示が解除され、約１１年５カ月ぶりに住民が再び住めるようになった。町営住宅も新設され、現在は約１００人が暮らす。帰還や移住が少しずつ進む中、「今こそ人を集めて地域の現状を発信し、復興を後押ししよう」と考えた。県内の花火大会を監修しているＮＰＯ法人県クリエイターズ協会理事長の田中聡さん（５８）と共に、今春から準備を本格化させた。 　会場となる中野地区を含む浜野行政区は震災の津波で１４人の命が失われた。約５０世帯ほぼ全ての住宅が流失。産業拠点や伝承館が整備されるなど街並みが変わり、近年は被災地を巡るホープツーリズムで周辺を訪れる外国人も急増している。当日は海外の人も楽しめる浴衣の貸し出しや線香花火作り体験などを企画。花火大会の前後に伝承館や近くにある浪江町の震災遺構「請戸小」などを訪れてもらい、国内外に福島の今を伝える好機とする。