「空気を運んでいる」ローカル線は存続?廃止? ともしびを失う…国も一緒に地域交通の未来を模索する制度がスタート
地域の移動手段として長年活躍し、車窓から見える風光明媚な景色が人気のローカル線。その半面、人口減少やマイカーの普及で利用者は減り、維持にかかる膨大な費用と見合わなくなっている路線も少なくない。鉄道事業者の負担となっているローカル線は廃止すべきか、それとも活用策を見いだして存続させるべきか。住民にとって便利な公共交通とは何か。国も議論に加わって地域交通の未来を模索する仕組みが10月から始まった。(共同通信=沢田和樹) ※この記事は、筆者が音声でも解説しています。各種アプリで、共同通信Podcast【きくリポ】で検索してお聴きください。 ▽山間部で乗客が激減するJR芸備線 9月22日、記者は昼前にJR東京駅を新幹線で出発し、広島駅へ向かった。翌23日に広島市と岡山県新見市を結ぶJR芸備線の存続をテーマにしたシンポジウムを取材するためだ。広島駅までは4時間弱、広島から滞在先の最寄り駅である三次駅まではさらに1時間半かかる。
夕方の広島駅のホームでは、列車が到着する前から帰路につく学生を中心に列ができていた。車内もほぼ満席だったが、山間部に進むにつれて乗客は減っていく。座席横の壁面には、途中駅からICカードが使用できないとの説明書きがあった。三次駅のさらにその先、備後庄原(広島県庄原市)―備中神代(岡山県新見市)は乗客が特に少なく、JR幹部に言わせると「空気を運んでいる」状態になることも多いのだという。 ▽100円稼ぐのに2万3千円の費用 鉄道では、1キロ当たりの1日平均乗客数を「輸送密度」と呼び、利用者数を示す指標として使う。JR西日本は輸送密度2千人未満の路線を「単独では維持困難」として公表している。芸備線の備後庄原―備後落合、備後落合―東城、東城―備中神代の3区間はいずれも昨年度の輸送密度が100未満だった。 中でも備後落合―東城は20人。JRが発足した1987年度と比べるとわずか4%に落ち込み、JR西日本で最も少なかった。2019~2021年度の平均で、100円を稼ぐのに2万3千円の費用がかかった慢性的な赤字区間だ。