真っ暗な地下洞窟で500日間、完全な隔離生活を送るという「命がけの大実験」
光のいっさい入らない地下洞窟で、誰とも接触することなく500日を過ごす──ベアトリス・フラミニのこの挑戦は科学者たちの関心を集め、彼女はさまざまな研究に協力することになる。そしていよいよ、孤独すぎる洞窟生活がスタートした──。(この記事は3回目/全7回) 【動画】500日の地下洞窟生活を終えたばかりのベアトリス・フラミニ
研究者たちが興味津々
彼女が考えたのは、風変わりで極めて個人的な実験だったが、これほど過激な試みは他の人にとっても興味深いに違いない。 そう気づいたフラミニは、アンダルシアにある2つの研究機関、グラナダ大学とアルメリア大学の研究者たちに、暗闇で長期隔離されている間のモニタリングを依頼した。もしかしたら、科学の発展に貢献できるかもしれない。いつの日か、人類が宇宙カプセルで火星に行く日が来るかもしれないのだ。 研究者たちはフラミニのアイデアに夢中になり、彼女の体験データを収集・分析することに同意した。彼らはフラミニのあらゆる身体的・心理的状態の側面を研究する計画を立てた。長期間のプレッシャーのなかで、認知能力がどのように変化するのか、暗闇での生活が概日リズムにどのような影響を与えるのか、精神的な落ち込みをどの程度感じるのか、といった具合だ。 時間や空間感覚の変化を調べる予定だったグラナダの心理学者フリオ・サンティアゴは、「こんなふうに孤立状態で方向感覚を失いたがる人など、滅多にいませんよ」と語る。 研究者たちはフラミニに一連のインタビューと予備テストをおこない、彼女にブレスレットを渡した。末梢皮膚温を測定し、寝ているか立っているかを判断することで、彼女の概日リズムを追跡するためのものだ。 冒険へのさらなる準備として、フラミニはスポーツ心理学者のデボラ・ゴドイと会った。ゴドイは彼女に、幻覚に恐怖を感じないよう、幻覚の見分け方のコツを伝授し、現実感を維持するために洞窟の中では思考を言語化するといいとアドバイスした。 アルメリアの神経心理学者マリア・ドローレス・ロルダン=タピアは、フラミニを2日にわたり自分の研究室に招いた。そこでフラミニは、皮膚センサーとVRヘッドセットを装着して、宇宙船を操縦して惑星を探索しながら機器の故障に対処したり、その他の障害を克服したりした。 このシミュレーションは、ストレス、驚き、退屈、疲労など、彼女の基本的な精神状態を把握するのに役立った。さらにフラミニは、「アイオワ・ギャンブル課題」というタスクにも取り組んだ。参加者が一連の山札からカードを選び、より有利な山札を見極めて利益を最大化することが目標のタスクだ。 フラミニは30分で50ドルを手にし、好成績を収めた。ロルダン=タピアは、フラミニを「決断力に富み、やる気に満ちており、規律正しい人物」であると評価した。