「やっと不動産価格が下がるぞ…!」と期待する人が見落としている“3つの大事な視点”
日銀の利上げに伴い、変動型の住宅ローン金利を見直す銀行が出てきている。こうした中、高騰が続いてきた東京の不動産価格が下がるのではないかという見方が強まっている。人口減少に金利上昇……不動産価格が下落する要素はそろったかのようにみえる。しかし、「そんなに簡単には下がらない」と筆者は考える。その理由とは。(アレース・ファミリーオフィス代表取締役 江幡吉昭) ● 高騰し続ける「東京の不動産価格」 利上げでどうなる? 日銀がついに利上げをし、マーケットに激震が走っています。米国の景気後退懸念も根強く、短期的には「何でも買えば上がる」という楽な株式相場はいったん終わったのかもしれません。 その場合、しばらく高騰を続けていた東京の不動産市場はどうなるのでしょうか。 識者の中には、東京の不動産市況の高騰は2030年あたりで終わるだろうと見ている人も少なくありません。人口減少社会であること以外に、金利上昇や、相続(高齢者が亡くなる)が大量に発生することなども、不動産価格の低下につながるだろうと考えられているのです。 今回は、日本の人口が減少し、金利も上昇、これから団塊の世代が亡くなると“大相続時代”がやってくる中で、東京を中心とする首都圏の不動産市場はどうなるのか考察をしてみたいと思います。 「なぜ、人口減少社会で都心部の地価が上がるのか?」といぶかしんでいる方も多いでしょう。 それは、逆説的に聞こえるかもしれませんが、「人口が減少するがゆえ」なのです。地方が衰退するのに反比例して都心に人が流入し続けるため、都心部の地価は上がるということなのです。
● ポイント(1)株価は急激に変動するが 不動産価格の変動はゆるやか まず理解しておくべきは、不動産価格と株価の関係性です。 不動産と株式市場には一定の相関性がありますが、株価は経済ニュースや投資家の心理によって短期でかつ急激に変動する一方、不動産価格はその変動がゆるやかです。 例えば、2008年のリーマンショックでは株価が急落し、日経平均株価はピークの60%以上の暴落となりましたが、不動産価格は都心部ではおおよそ10%程度の下落で済みました。このように、株価が大きく下がったとしても、不動産価格が同様に急落するわけではありません。 特に東京などの大都市では、需要が底堅く、短期間での価格変動が少ないという特徴があります。これは、東京が経済の中心地であり、常に多くの人が仕事や生活のために集まる場所であることが大きな理由でしょう。 株が大きく下がったからといって不動産も大きく下がる、というものではないのです。 ● ポイント(2)東京都の人口ピークはこれから 「大相続時代」でも一気に供給量増とはならない予想 次に、人口動態の視点から見てみましょう。 日本全体としては人口減少が進んでいますが、東京の人口は2040年頃まで増加が続くとされています(国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口』令和5年推計)。また、東京都の世帯数のピークは2035年と予測(令和2年国勢調査をもとに東京都人口統計課が予測)されており、東京23区の約半分に当たる文京、江東、杉並などの10特別区は世帯数が2045年以降にピークを迎えるといわれています。 人口が増え続ける限り、住宅の需要も維持されるため、不動産価格が大きく下がることは考えにくい状況です。