磐城、夢舞台つかむ 21世紀枠、喜び爆発 /福島
<センバツ高校野球> 夢舞台への一歩を踏み出した。第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)の選考委員会で、磐城(いわき市)が21世紀枠の代表校に選ばれた。同校のセンバツ出場は46年ぶり3回目。台風19号で被災した地元を勇気づける吉報に、選手たちは「甲子園の舞台で勝つために、チーム一丸となって頑張ります」と決意を新たにした。大会は3月13日、毎日新聞大阪本社のオーバルホールで組み合わせ抽選会があり、同19日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する。【磯貝映奈、乾達】 24日午後3時過ぎ、磐城の校長室の電話が鳴った。緊張した面持ちで静かに待っていた阿部武彦校長に21世紀枠での出場が伝えられると、阿部校長は「ありがたくお引き受け致します」と応じた。前日の練習後、「直前まで『俺たちが行くんだ』という気持ちで、やるべきことをしっかりやろう」と選手たちに話していた木村保監督は、校長室で涙を流し、両手で顔を覆った。 選手たちはグラウンドで輪になり、落ち着かない様子で報告を待っていた。阿部校長が駆けつけ「21世紀枠の代表校に選出されました。存分に力を発揮できるように頑張りましょう」と伝えると、選手たちは「よっしゃ」と控えめに喜び、ほっとした様子で笑みを浮かべた。 報告の後、木村監督は、選手たちの輪の中心に入り、「選手権ではなく、選抜。47都道府県の素晴らしい取り組みをしているさまざまな学校の代表として選ばれたことを心に刻んでほしい」と涙ながらに語りかけた。話が終わると、選手たちは喜びを爆発。「よっしゃー」「やったね!」などと快晴の空に向かって叫び、抱き合った。 涙が止まらなかった木村監督は「甲子園で勝つという目標を胸に刻んで、選手は東北大会後も浮つくことなく練習に取り組んできた。大きく成長しており、頼もしい。準優勝した大先輩の歴史に挑戦する権利を得た。全力ですがすがしくプレーし、伝統のコバルトブルーのユニホームが躍動する姿を見せたい」と話した。 岩間涼星主将(2年)は「台風19号で地元に被害が出る中で東北大会に行っていいのかという思いもあったが、自分たちにできるのは勝ちきることだとチームが一つになれた。文武両道が磐高の強み。甲子園でも考え、会話する力を武器に、被災した人の思いも背負って戦い、勝利を届けたい」と話した。 エースの沖政宗投手(2年)は伝統校のエースナンバーを背負う責任の重大さを感じていた。「『絶対』がない中で、待つことしかできず、待ち遠しかった。自分の投球でチームを引っ張り、歴代の先輩方が残した功績を超えていきたい」と意気込んだ。 同校には野球部OB10人あまりも集まり、1995年夏以来、四半世紀ぶりの甲子園出場を喜んだ。いわき市の住宅会社員、米倉知昭さん(42)は当時、4番打者として出場。「自分たちも10年ぶりの出場で浮足立った。今回は21世紀枠で選んでもらったことに感謝し、しっかり戦ってほしい」とエール。さらに「いわきでは、皆が憧れるコバルトブルーのユニホーム。甲子園で見られるのは、地域の大きな力になる」と活躍に期待した。 ◇春2回、夏7回出場 磐城は昨秋の県大会で3位となり、12年ぶりに東北大会に出場。東海大山形、能代松陽を撃破し、公立校で唯一、8強入りした。 チームの強みは守りからリズムを作り、攻撃へとつなげられること。エースの沖政宗投手(2年)を、捕手の岩間涼星主将(2年)が支える。沖投手は県大会地区予選から東北大会まで全10試合中9試合に登板し、5試合で完投。伸びのある直球とスライダーなどの変化球を駆使し、打たせて取る。打線は清水真岳選手(2年)、市毛雄大選手(2年)らが出塁し、主軸の岩間主将や勝負強い樋口将平選手(2年)らが得点につなげる。 文武両道の校風で、限られた時間の中で効率よく質の高い練習を心掛けている。また、地域の児童クラブを定期的に訪問し、ボール遊びなどを通して交流を続ける。台風19号でグラウンドが浸水し、練習ができなかった間は、地域で泥出しなどのボランティアに励んだ。 1896年創立の県立校で、野球部は1906年創部。「知性と責任」を校是に、全員が大学進学を目指す県内屈指の進学校だ。18年度から3年間、「福島スーパー・イノベーション・ハイスクール」に指定された。福島の復興をけん引するリーダーの育成に力を入れる。 運動、文化系合わせて34の部活動がある。野球部はこれまで甲子園に春2回、夏7回出場。71年夏に準優勝し「コバルトブルー旋風」を巻き起こした。ラグビー部なども全国大会の出場経験があり、19年は女子弓道部が団体で全国3位に輝いた。 ……………………………………………………………………………………………………… ◇センバツまでの軌跡◇ <秋季県大会=昨年9月13~24日> 2回戦 ○3―2 福島東 準々決勝 ○5―1 須賀川 準決勝 ●6―7 福島成蹊 3位決定戦 ○4―3 東日大昌平 <秋季東北大会=昨年10月11~18日> 1回戦 ○6―0 東海大山形(山形) 2回戦 ○2―1 能代松陽(秋田) 準々決勝 ●3―6 仙台城南(宮城) ……………………………………………………………………………………………………… ◇メンバー◇ ※県大会3位決定戦より 投 沖政宗 (2) 捕 岩間涼星 (2) 一 小川泰生 (2) 二 今野颯良 (1) 三 首藤瑛太 (1) 遊 市毛雄大 (2) 左 樋口将平 (2) 中 草野凌 (2) 右 竹田洋陸 (2) 清水真岳 (2) 佐藤綾哉 (1) 國府田将久 (1) 馬上斗亜 (2) 上田賢 (1) 白土遥也 (2) 菅波陸哉 (2) 野田和孝 (2) 柳澤諄 (1) 鈴木隆太 (1)