「別に女になりたかったわけじゃない」 性別適合手術を選んだ理由 カルーセル麻紀81歳、差別や偏見と“戦い”の人生
■手術後に高熱が出て… モロッコには40日間滞在
──そして1973年、モロッコで手術を受ける 行って砂漠の中ですよね。そしてカサブランカ。たまにラクダやロバがいるくらいで、はるか向こうに白い家が出てきたな、と思ったら、そこが産婦人科でした。 一緒にいった友達が先に手術を受けて、大体2時間くらいしたら帰ってきました。私も注射を2回打たれて、オペ室に。“どうやってするのかな”と思って見たんだけど…。夢から覚めたら3日たっていました。 目が覚めたとたん、「ああ良かった!なくなってる」と見て思いました。忌まわしいものがなくなっている、と。うれしかったですよ。 だけど術後、どんどん高熱が出てしまった。3時間くらいで着ていた浴衣もぐしょぐしょになるくらい。友達は大丈夫だったけど、私は全然退院できなくて。熱が出てて一人になって寂しいし、小さい部屋に移されて泣いてました。結局モロッコには40日間いました。
■戸籍が変わって、名前が変わって できると思わなかった
──カルーセルさんは2004年に戸籍上も女性となり、“平原麻紀”と改名しました。法律が変わったことなど、いまの状況をどう見ていますか? すごくいいことだと思いますよ。みんなよく頑張ったじゃない。政府も世間も認めてくれたじゃない。でもね、あたしたち“少数派”なの、少ないの。だから、私が生きていて、こんな戸籍が変わって、名前も変わって、とできるとは思わなかった。 苦労しましたよ。精神科に行ったり、いろんな弁護士さん連れて裁判をやったり。でも、それは、あたしが最初にやればみんな楽になると思ったんですよ。 ──カルーセルさん自身、今後こういうことをやりたいという夢はありますか? ないわよ、あんた!あるわけないでしょう!81歳だよ、あたし。 ──夢はないですか? 夢は好きなお酒飲んで、煙草を吸って、おいしいものを食べて、来た仕事を受けるだけ。後はもう行くだけだよ、天国へ行くか、地獄へ行くか、分かんないけれども。多分私は化けて出てくると思うけど。 今こうやって取材を受けて、楽しくしゃべって。これで十分。言いたいこと言ってます。