アーセナルがふさいだ三笘薫への道筋。なぜブライトンは連続得点記録を止められたのか【分析コラム】
プレミアリーグ第17節、アーセナル対ブライトンが現地時間17日に行われ、2-0でホームチームが勝利している。このスコア以上に三笘薫が所属するブライトンは完敗だった。これまでアウェイチームは大敗を喫したとしてもゴールは奪えていた。しかし、この試合では完封負け。その要因とは?(文:安洋一郎) 【動画】アーセナル対ブライトン ハイライト
●アーセナルがブライトンにスコア以上の圧勝 2-0というスコア以上に「両チームの差」が感じられた試合だった。 ホームのアーセナルはブカヨ・サカとガブリエウ・マルティネッリの両翼を軸に前半から猛攻を仕掛けて試合を終始支配した。後半に生まれたガブリエウ・ジェズスとカイ・ハフェルツのゴールを守り切って、プレミアリーグで2試合ぶりに勝ち点3を積み上げることに成功している。 一方のブライトンはかなり厳しい戦いだった。木曜日に行われたUEFAヨーロッパリーグ(EL)マルセイユ戦に全力で挑んだことも影響したのか、選手たちのコンディションはかなり微妙だった。 冒頭に述べた「両チームの差」はシュート本数を見れば明らかだ。試合を通してアーセナルが放ったシュート数26(枠内9)に対してブライトンはわずか6(枠内1)と、4倍以上の差がついた。 さらに前半だけにフォーカスをすると、アウェイチームは1本もシュートを打てないままハーフタイムを迎えている。 これにはブライトンのロベルト・デ・ゼルビ監督も「結果にはがっかりしているが、敗北は然るべきだったと思う。アーセナルは私たちよりはるかに上手くプレーしたし、勝利に値した。私たちは上手く守って応戦したが、正直彼らの方がよっぽど良かった」と完敗を認めるしかなかった。 そしてこの試合でブライトンはある記録が途絶えた。それが「32試合」というリーグ戦での連続得点記録だ。 どんなに大敗を喫したとしても最低でも1ゴールを奪っていたデ・ゼルビ監督のチームは、なぜアーセナル相手にチャンスすらまともに作れなかったのだろうか。 ●アーセナルがブライトンを圧倒できた理由 ホームのアーセナルは前線からかなりの強度でブライトンを迎え撃った。 デ・ゼルビ監督が率いるチームは自陣からのビルドアップの際に中盤、もしくは前線に縦パスを当ててから攻撃がスタートすることが多い。昨季はアレクシス・マック・アリスター(現リバプール)とモイセス・カイセド(現チェルシー)という、スーパーな2人のボランチがいたため、相手の中盤のプレッシャーにも屈することなく、ダイレクトやワンタッチでボールを捌いて攻撃を前進させることができていた。 しかし、今のブライトンに彼らほど優れた中盤の選手たちはいない。対するアーセナルはアンカーのデクラン・ライスを筆頭にマルティン・ウーデゴール、ハフェルツという強力な3枚が中盤に構えている。 結果から言うとブライトンは完全にアーセナルの強度に屈した。 中盤を経由した攻撃はライスらアーセナルのMF陣にあっさりと回収され、最前線への縦パスも、ウィリアム・サリバとガブリエウ・マガリャンイスに対応されたことで、攻撃の起点を作ることができなかった。 攻から守へのネガティブトランジションもほぼ全てでアーセナルが上回り、セカンドボールを効率よく回収。サイドでの攻防もサカとマルティネッリのプレスバックでアーセナルが圧倒し、必然的にホームチームが相手陣内に押し込む展開が増えた。 ●三笘薫がほとんどチャンスに絡めなかった理由 三笘にフォーカスをすると、彼にとっても厳しい試合となった。 アーセナルはサカがいる右サイドを起点に多くの攻撃を仕掛けたため、必然的に日本代表FWの守備をする時間が増えた。 仮にブライトンの左SBがペルビス・エストゥピニャンであればもう少し負担が減ったかもしれないが、同選手の怪我による離脱に伴い、この試合は大ベテランのジェームズ・ミルナーが起用されていた。サカとのマッチアップで不利だったのは見れば明らかだった。 また、右のインサイドハーフを務めるウーデゴールも絶好調だったことも相まって三笘の守備負担は大きくなり、前半からボックス内に戻ってディフェンス対応をするなど、かなりの距離を走らされていた。 この守備負担の大きさが前提にあったことで、三笘はほとんどチャンスに絡むことができなかった。その中で訪れた唯一のチャンスが、パスカル・グロスにアウトサイドパスを出した82分の場面だ。 このシーンでブライトンはチームとして日本代表FWに前を向かせた状況で配球することができている。強かった時期のブライトンは、三笘に高い位置でボールが入ってからのチャンスメイクが多かった。それを可能にしていたのが先述したマック・アリスターとカイセドの両名なのだが、彼らが抜けたことで三笘が前向きでボールを受ける機会がめっきり減ってしまっている。 57分に三笘が自慢のスピードで長い距離を運んだ場面があったが、これは低い位置からのプレーだった。ハーフラインより手前からのドリブルは、相手チームからすればそこまで脅威ではない。 ブライトンからすれば82分の場面のように、チームとして三笘に前向きでボールを預けることが重要であり、逆にそこまでの道筋を絶たれてしまうと厳しい戦いを余儀なくされる。アーセナルはブライトンが起点にしたいプレーをことごとく封じていたため、三笘に良い形でボールが渡ることはほとんどなかった。 そしてソリー・マーチら負傷者が続出しているブライトンでは、三笘が封じられてしまうとチャンスを作ることが難しい。アーセナル相手にほとんどチャンスを作ることができなかったのは、今の戦力と戦い方からすれば必然だったのかもしれない。 【了】
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