大学ラグビー、新生明大の再建テーマは「自律」
開幕戦は消化不良
合言葉は「前へ」。紫紺と白のジャージーを身にまとった明大は、日本の大学ラグビー界屈指の古豪だ。ランナーが真っ直ぐ突き進むスタイルを伝統とし、全国大学選手権では通算20度の優勝を成し遂げてきた(前身の東西対抗を含む)。 しかし、最後の大学日本一は1996年度で、近年は王座から遠のいている。元日本代表ウイングの吉田義人が指揮を執った昨季までの4年間も、全国4強止まりだった。捲土重来を期し、今季から丹羽政彦新監督が就任した。 9月15日、埼玉・熊谷ラグビー場。 関東大学対抗戦Aの初戦は45-0で制した。しかし、前年度7位の青山学院大を向こうにミスを重ね、「クオリティは良くなかった。勝てたことだけ(が収穫)」と指揮官は振り返る。新しいチームの再建のキーワードとした「自律」を納得した結果につなげるには、まだ時間がかかる。 吉田前監督とは学生時代の同級生だった丹羽監督は、勤務先からの出向という形で着任した。12年12月末、チームは選手権の予選プール敗退。事実上はプロ契約に近かった前任者は、続投を求めたが、大学当局は後任選びに入ったのだ。近しい人物によると、元ジャパンのトライゲッターは「大学にラグビー部の監督を雇う予算がない」と告げられたようだ。体制が変わり、雰囲気も変わった。 以前は指揮官が監視台から練習を眺めるなか、細谷直ヘッドコーチが事細かな指示でプレーヤーに戦術を落とし込んでいた。かたやいまは、首脳陣全員が練習試合をグラウンドレベルで観るなど部員と間近で接しているのだ。選手への個別取材も首脳陣の意向で断ることがあった前体制時とは違い、クラブ運営もほぼ学生に委ねている。 戦術面でも、丹羽監督が「型にはめていた部分を変えた」と言うように、やる側の判断力向上を目指している。3年生のフルバック村井佑太朗は、「やっていることはあまり変わらないけど」としながら、「去年までは(トライを)1、2次(少ない手数)で取ろうとしていたのを、今年はフェーズ(攻撃局面)を重ねて取ろうとしている」。パスの回数を増やす分、選手間の密な連携がより求められる。