ゲームを改ざん「チート行為」に手を染める未成年増加◆「こんなことで事件に」憤る親も #令和の子
◇「こんなことで事件に」憤る親も
オンラインゲームの運営企業は、こうした迷惑ユーザーの対応に神経を尖らせている。対戦相手のチートによって一方的に倒されたり、レアアイテムを課金せず不正入手したりといったことが常態化すると、ゲーム自体がつまらなくなり、深刻な「プレイヤー離れ」が起きてしまうためだ。 スマートフォン用のある人気ゲームアプリの運営企業では、毎日システム上でチート使用者がいないか監視し、発見次第アカウントを利用停止にしている。「チートの被害額は算出しにくいが、放置するとゲーム性が崩壊してしまう。他社では、レアアイテムを複製するチートが出回り、ロールバック(原状回復)できずにサービス終了してしまったゲームもあり、他人事ではない」。関係者はそう危機感を募らせる。 この関係者は「社外には公表していないが、チート行為が刑事事件に発展したケースもこれまで10件近くあった」と明かす。容疑者が未成年だった事件では、社員が警察署へ面会に赴いたところ、同席していた保護者から「こんなこと(チート)で事件にしなくてもいいのに」と責められたこともあったという。「『チート罪』のような名前の罪があるわけではないので、深刻さが伝わりにくいのかもしれない。子どもだけでなく、保護者にも啓発する必要がある」と嘆いた。 ◇「裏技」との境目は 自分のキャラクターを無敵状態にしたり、敵を一発で倒したりできるテクニックは、かつては「裏技」と呼ばれ、必ずしも違法なものではなかったように思う。どこまでが「裏技」で、どこからが違法な「チート」なのか。ゲームと違法行為の関係に詳しい、東京フレックス法律事務所の中島博之弁護士に聞いた。 ―個人で楽しむ「裏技」と、違法な「チート」との境目はどこにあるのでしょうか。 ゲーム企業のサーバーに接続して遊ぶオンラインゲームの場合、チート行為のためにうその情報をサーバーに送信すると「私電磁的記録不正作出・同供用」、それによって業務を妨害すると「電子計算機損壊等業務妨害」といった犯罪に当たる可能性があります。オフラインで遊ぶゲームの場合であっても、著作物であるゲームソフトを不正に書き換える行為が、著作者人格権(同一性保持権)の侵害に当たると判断されたケースがありました。他のプレイヤーがゲームを楽しめなくなったり、売り上げに悪影響を及ぼしたりするチート行為は、特に取り締まり対象になりやすいと考えられます。 ―チート用のツールをウェブ上で公開したり、動画や記事でやり方を指南したりした場合はどうですか? そうしたツールを作った時点で私電磁的記録不正作出の罪に当たる可能性がありますし、そうしたツールや動画によって別の人が罪に問われた場合、その共犯とみなされることもありえます。「人狼ジャッジメント」では、チートのやり方を動画やウェブ記事で拡散していた人物に対して、運営企業が訴訟を起こし、1000万円の損害賠償命令が下されています。 ―チート行為が身近になり、若年者が事件を起こすケースも増えています。 「チート」というとゲームプレイの一環のようなイメージがありますが、実際は犯罪とみなされたり、多額の賠償責任を負ったりするリスクの高い行為です。1日に何億円も売り上げるような人気ゲームでチートを行った場合、対応のためのサーバーメンテナンスで売り上げに甚大な損害が生じ、億単位の賠償金を請求されるかもしれません。基本プレイ無料のオンラインゲームに触れる年齢が下がっていることもあり、未成年が軽い気持ちでチートに手を出さないよう、学校や保護者からも啓発することが重要だと思います。 この記事は、時事通信社とYahoo!ニュースの共同連携企画です。