トランプ当選で、NATOが形骸化? ほくそ笑むプーチン、ロシア撤退の「日本車メーカー」は今後どうなる
大手自動車メーカー、ロシア撤退相次ぐ
ロシアによるウクライナ侵攻から2年以上が経過しているが、日本の大手自動車メーカーの間ではロシアからの撤退が相次いだ。 【画像】えっ…! これが60年前の「蓮田SA」です(計12枚) 侵攻から半年あまりが経過した2022年9月、トヨタ自動車はサンクトペテルブルクにある工場を閉鎖し、ロシアでの生産から撤退すると発表し、その後同工場はロシア産業貿易省傘下にある「自動車・エンジン中央科学研究所」へ譲渡され、国有化された。 その翌月には日産自動車もロシア事業からの撤退を表明し、現地の子会社であるロシア日産自動車製造会社の全株式を自動車・エンジン中央科学研究所に1ユーロで譲渡する方針を明らかにした。 その後、同年11月に全株式の売却が完了し、日産のサンクトペテルブルク工場は自動車・エンジン中央科学研究所への譲渡後、ロシアの乗用車最大手アフトワズが2022年末から自動車生産をその工場で開始した。 マツダも11月、ロシアからの撤退を表明し、ロシアで製造を手がける大手自動車メーカー「ソラーズ」との合弁会社の株式を同社に1ユーロで譲渡することを明らかにし、いすゞ自動車も2023年7月、トラックの生産や販売などのロシア事業からの撤退を発表し、子会社の株式を現地の自動車大手ソラーズに譲渡したと発表した。 大手自動車メーカーの間で生じたドミノ現象的な脱ロシアの背景には、この政治的緊張が長期的に続くことが避けられないとの判断があったことは想像に難くない。 そして、その判断どおり、今日のウクライナ戦争は長期化が間違いない状況だ。3月の大統領選挙で5選を果たしたプーチン大統領は最近、追加で15万人を動員する大統領令に署名し、今後ウクライナでの攻勢をいっそう強めていく構えだ。 一方、ウクライナ側の劣勢は顕著で、ゼレンスキー大統領は米国からの軍事支援が停止されれば戦争に負けると繰り返し主張し、両国が置かれる状況は全く異なる。
安全保障の不確実性
ウクライナがロシアによる侵攻を許したひとつの背景に、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟していないことがある。 NATOはその条約第5条で1加盟国への攻撃は全加盟国への攻撃とみなすと規定し、要は集団的自衛権を認める集団防衛体制となっており、仮にウクライナがNATOに加盟していれば、ロシアはNATO加盟31か国(当時のNATO加盟国数にウクライナが加盟していたとして)を敵に回すことになるので、プーチン大統領も侵攻という決断を下していなかった可能性が高い。 ウクライナ周辺には同じく旧ソ連圏を構成してきたバルト3国があるが、リトアニアもエストニアもラトビアもNATOに加盟しているが、ウクライナのように加盟していなければ侵攻の対象になっていた可能性は排除できない。スウェーデンとフィンランドがNATO加盟を急いだのも、それによって自国の安全保障を担保しようとしたからだ。 しかし、NATOの傘下に入ればロシアによる脅威から完全に身を守れるかといえば(海外進出企業の観点でいえば、ロシアと距離的に遠くないNATO諸国であれば社員は安全に仕事できるか)、最近不穏な空気が漂う。 米国では秋に大統領選が行われるが、トランプ氏は2月、 「NATO加盟国が軍事費を適切に負担しなければ、ロシアからの攻撃があっても米国は支援せず、好きにやるようロシアにけしかける」 などと発言し、大きな物議を交わした。これに警戒感を抱いたのか、その後フランスのマクロン大統領は、 「ウクライナ戦争でロシアを打倒することは欧州の安全保障にとって不可欠であり、西側諸国の地上部隊をウクライナへ派遣することで合意はないものの、その可能性を現時点で排除するべきではない」 と一歩踏み込んだ発言をした。これも大きな物議を醸し出すことになり、ドイツのショルツ首相やNATOのストルテンベルグ事務総長らは、NATO加盟国の兵士が戦場に派遣されることはないとマクロン大統領の発言を強く否定したが、オランダやリトアニアなど一部のNATO加盟国からはマクロン発言に同調するような言及もある。 マクロン大統領は3月にも、ロシアがウクライナに勝てば次は欧州だと警告する発言もしている。