話題沸騰の映画『哀れなるものたち』1分で分かる見どころレビュー!
発見、感動、思索……知的好奇心を刺激する、映画好きな大人のための今月の新作を厳選! 【画像】きらびやかな衣装にも目を奪われる『哀れなるものたち』
鬼才ヨルゴス・ランティモスと実力派エマ・ストーンのタッグが切り拓く未知の世界──『哀れなるものたち』
今年のゴールデン・グローブ賞で作品賞とエマ・ストーンの主演女優賞、二冠を獲得した『哀れなるものたち』。 昨年のヴェネチア国際映画祭でも金獅子賞を受賞した本作は、『ロブスター』『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』等の作品で、国際映画祭に出品のたびに大賞受賞などで話題をさらってきたギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモスの最新作だ。 エマ・ストーンとは『女王陛下のお気に入り』に続く2度目のコンビ作品となる。 舞台はビクトリア朝時代のロンドン。エマ・ストーンが演じるヒロイン、ベラは、投身自殺によって脳死状態になるが、天才外科医バクスター(演じるのは名優ウィレム・デフォー)によって腹に宿した胎児の脳を移植されて蘇る。 容姿だけ見ると美しい若い娘だが、頭の中はまだ赤ん坊。映画の原作はアラスター・グレイの同名小説であり、その物語のベースになっているのは、フェミニズムの先駆者メアリー・ウルストンクラフトの娘メアリー・シェリーが書いたゴシック小説「フランケンシュタイン」だ。 シェリーの小説では博士が自ら生み出した“怪物”を醜さゆえに捨て去るのに対し、バクスターは、動きがギクシャクした無垢なベラを父親のように見守るが、貴重な研究材料でもあるため、弟子と結婚させて手元に置こうとする。 ところが弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)に誘惑されたベラは「世界を自分の目で見てみたい」と“父”を説き伏せてダンカンとともに船出する。
リスボン、アレキサンドリア、パリをめぐる旅の風景は過激にデフォルメされ、絢爛豪華そのもの。その中で、ベラは本能と好奇心の赴くままに突き進んで世界を発見し、“生きる”意味を獲得してゆく。 彼女を我が物にしたがる男たちの手をすり抜け、自由な精神とともに自立してゆくベラの冒険譚は、画期的な現代のカリカチュアだ。 そしてベラが実践によって性の快楽を知る過程を果敢に演じるエマ・ストーンの心意気にも瞠目させられる。 首もとが詰まったゴージャスな衣装、ノーメイクに黒々とした太い眉とストレートのロングヘア。その姿は、大事故から九死に一生を得て生き延び、マチスモの国メキシコでバイセクシャルに生き、自身のアイデンティティを追求したフリーダ・カーロに寄せられているのも納得だ。 『哀れなるものたち』 TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中 BY REIKO KUBO