3人の“番記者”が振り返る、大谷「エンゼルス」選択の妙 二刀流実現の「軌跡」と大谷が目指したものとは?
そもそも、防御率27.00だった最初のスプリングトレーニングの後に、1軍に残れなかったかもしれない。 エンゼルスは、彼にすぐに結果を求める必要があるほど強いチームではなかった。 だから大谷も、「まずはエンゼルスで二刀流を完成させよう。マイク・トラウトもいるし、自分が二刀流で活躍できるようになれば、優勝も狙えるようになるはずだ」と考えたというのが僕の推測。 それともう1つ。 花巻東の佐々木(洋)監督にインタビューした時に、「大谷はドジャースかヤンキースに行きますよね?」と聞いたら、監督は、「そうは思いません。そんなにすごい伝統や日本人選手在籍の歴史もないチームに行くと思いますよ。彼は自分で歴史を作っていきたいと思っている」と答えたんだ。
そしてこう付け加えた。 「彼は全国のどの高校にも行けたはずなのに、誰もやったことのないことをやるために岩手にとどまった。そういう人間なんです」と。 高校卒業時も、「アメリカに行くからドラフト指名しないでくれ」と日本の球団に言ったよね。高校から直接メジャーに行く選手なんていなかったのに。 日本ハムは、誰もやったことのない二刀流に挑戦するチャンスを与えることで、日本に残るよう説得した。 2017年にメジャー挑戦を発表した時も、日本球界の重鎮たちが、「アメリカでは二刀流は難しいだろう」と言っても、彼は気にしなかった。とにかく誰もやったことのないことをやりたいという気持ちが強いんだ。
ほぼ自分1人の力で球団を変えたと称されるような存在になりたいんじゃないかな。スポーツ界には、そういう選手が何人かいる。 シカゴ・ブルズといえば、何を思い浮かべる? マイケル・ジョーダンだよね、引退して何年も経っているのに。ディエゴ・マラドーナは30年間ナポリでプレーしていないけど、チームの名前を聞いたら、真っ先に思い浮かぶのはマラドーナ。 ヤンキースに行ったら、そういう存在になるのは難しい。ヤンキースは個々のスター選手を超越するくらい伝統のある球団だから。