新設の女性活躍大臣って何? 秋山訓子
臨時国会が始まりましたが、安倍首相はこの国会の柱に「地方」とともにもう一つ「女性活躍」を掲げています。そのための政策を推進するよう、改造内閣では女性活躍大臣を新設し、有村治子参院議員を任命しました。この国会で女性管理職の登用についての計画策定を企業に義務づける女性活躍推進法などを出す予定です。 女性の活躍、について反対する人は少ないでしょう。第二次安倍政権は集団的自衛権の行使容認の閣議決定など、マッチョな政策が目立ちましたから、それをカバーする意味もあると見られます。たとえそうであっても、女性の活躍を後押ししてくれるのは素直にうれしい。そう思う人は多いのではないでしょうか。実際、女性閣僚5人の起用は世論にも好意的に受け止められて、内閣改造後の内閣支持率は伸びました。国に背中を押されなければ、女性を登用しようとしない企業もありますから、かけ声をかける意味は大きい。 だけど。何かひっかかるところがある、気もする。そういうもやもやがある人も多いのでは。なぜでしょうか。 そもそも、女性活躍大臣を新設というけれども、男女平等に取り組む男女共同参画担当大臣というのはこれまでずっといました。それをあえて名前を変えるのは、なぜ? まあ、意気込みを表してのことではあるのでしょうけど。 それから、安倍さんは2012年に首相になってすぐ、「女性活用」を掲げました。そこで首相が言ったり、出てきた政策が「3年間抱っこし放題」とか「女性手帳」とか。どちらも女性の間から批判を受けました。そう、女性たちが政策で行ってほしいことと何かずれているのです。 さらに、安倍さんのまわりには保守的というか、伝統的家族観の持ち主というか、そういった人たちが多い。たとえば、夫婦別姓には反対とか、婚外子への相続差別の撤廃を「家族が崩壊する」と反対したり。 女性閣僚のうち、有村女性活躍相と山谷拉致担当相は選択的夫婦別姓に反対する大会に参加したことがあり、高市総務相も夫婦別姓に反対です(ちなみに山谷さんも高市さんも、本名は夫の名字ですが、政治活動では通称を使用しています)。 加えて、女性活躍というけれど、どうも安倍首相の言う「女性」というのは一流企業に勤めるエリート層で、そこからこぼれ落ちてしまう女性に目配りしていないのでは?という指摘もあります。 そういう背景があるので、女性活躍!と言われても、素直に受け止めきれないところがあるわけです。どうか杞憂に終わりますように。 ---------------- 秋山訓子(あきやま・のりこ) 朝日新聞政治部次長。朝日新聞入社後、政治部、経済部、AERA編集部などを経て現職。著書に「ゆっくりやさしく社会を変える」