森に包まれた境内で執り行われた秋祭りの神事＝１１日午前９時２分、丹波篠山市石住、松尾神社

　秋本番。各地でさまざまな祭りが開かれる中、「兵庫県で最も兼務の多い宮司」で、丹波篠山市内５４社を掛け持つ佐佐婆（ささば）神社（同市畑宮）の日置春雄宮司（６３）は多忙を極める時期を迎えた。今月１１日には同市大山地区にある１１社の祭りに赴いた。早朝から６時間超、約２１キロの行程に密着した。（秋山亮太） 【写真】急階段を上る日置春雄宮司。早朝から動き続け疲れが顔にも表れる ■体はへとへと、口はからから…でも、各地の笑顔が喜び 　同地区では古くから総社・神田神社の例祭直前、一斉に秋祭りがある。以前は宮司だった父の春弘さんと２人で１１社を分担。春弘さんが亡くなり、昨年から１人で回るようになった。地域も各神社の伝統を守るために協力。地元の「大山振興会」はタクシーを用意して１１社回りをサポートし、住民らも祭りの準備を早めに整えるなどしている。 　午前６時４０分、神田神社に日置さんが到着。気を整え、同７時に神社の責任役員とタクシーで出発した。同２０分、最初の追入神社で神事が始まり、早朝の静かな境内に祝詞が響いた。 　移動を含めて１社にかけられる時間は約３０分。タイトだが神事の前後には住民らと話す時間をとった。「大切な場所を守ってくださっている。足を運べる機会は特に大事にしたいんです」 　午前１０時半、７社目の大歳神社に着いた。「口がからからや」。水分もほとんどとらずに３時間。祝詞も腹圧をかけるため想像以上に体力が必要という。続く愛宕神社は約１３０段の急階段がある１１社回りのヤマ場。途中ひと呼吸を挟んで登り切り、神事に臨んだ。 　１１社目の二ノ宮神社に着いたのは午後０時半ごろ。体はすでにへとへとだが、「祭りで顔を合わせることが、今年も元気で会えたという喜びや、地域への感謝を強く抱ける大事な場になっている」と日置さん。「１１社を訪ね、先人から受け継いだ伝統と文化を未来へつなぎたい思いが一層強まった」と話していた。