《アルゼンチン》町民3割がねずみ講被害=メッシの偽動画使う投資詐欺も
アルゼンチンの小都市サンペドロ市で、市民の約3割が詐欺被害(ねずみ講の一種)に巻き込まれ、総額約2億8千万レアル(約75億円)を損失するという事件が発生した。同国の長引く経済危機で国民が苦しむ中、米国人経営者を装った2人の男が偽の投資アプリ「レインボーEx」を使い、仮想通貨での高リターンを約束する詐欺を働き、多くの住民が貯蓄を失う被害を受けた。詐欺の手口は多様で、サッカー界のスーパースター、リオネル・メッシのディープフェイク(人工知能を用いて合成された偽動画)を使った投資詐欺も出現しており、特に若者がターゲットとなっていると28日付オ・グローボ紙などが報じた。 同市は、首都ブエノスアイレス市から北に164キロの距離にあり、オレンジの産地として知られる人口約7万人の静かな町だ。同投資アプリ会社の米国人幹部を偽ったポーランドの俳優2人が、仮想通貨で毎日最大で2%のリターンを保証すると謳って宣伝し、住民の多くはそれを信じて資金を注ぎ込んだ。ブエノスアイレスの高級ホテルで記者会見を開くことで信頼性を高める手法を用いたが、2人は逮捕された。 この詐欺はポンジ・スキーム(ねずみ講)の一種で、新たな投資家から集めた資金を利用して、既存の投資家に利益を支払う形をとる。最初に投資を行った人々には、他の投資家から集めた資金を用いて高いリターンを約束し、そのリターンを支払うことで新たな投資家を引き寄せる。 最初こそ一見すると運用が成功しているように見え、さらなる投資を呼び込むことが可能になる。だが実際には利益は実体のある投資から得られるのではなく、新しい投資家の資金を回しているに過ぎないため、持続性がない。やがて新たな投資が減少すると資金が回らなくなり、最終的に多くの投資家が損失を被る結果となり、長期的には必ず崩壊する運命にある。 被害者のカルロス・ロドリゲスさん(66歳)は地元ラジオ局の取材に対し、家族ぐるみでこのアプリに信頼を寄せていたと語っている。彼の証言によれば投資アプリは1日に80~100ドルを稼げると表示され、収入がほぼ倍増する状況だった。だが、深刻な景気後退と三桁のインフレに苦しむ国で、簡単に稼げる夢はすぐに崩れ去り、ロドリゲスさんはほとんどの貯蓄を失った。同市のセシリオ・サラサール市長によると、このプラットフォームに投資した町民は1万5千~2万人に及ぶとみられている。 被害者約100人の代理人を務める弁護士のアドルフォ・スアレス・エルダイレ氏は、アルゼンチン全土からも被害報告が寄せられていると述べており、別のプラットフォーム「ピーク・キャピタル」も18日に閉鎖された。 詐欺の手口は多様で、最近ではサッカー選手メッシのディープフェイク動画が75ドルを1週間で2千ドルに増やすという詐欺を宣伝していた。社会学者のエセキエル・ガット氏は「パヒナ12」紙取材に「一部の投資アプリケーションのインターフェースがビデオゲームのインターフェースに似ている」と指摘した。 このような詐欺は経済危機に苦しむ若者層を主な標的にしている。15~29歳の60・7%が貧困層に分類される中、彼らに「瞬く間に億万長者になれる方法がある」という幻想を、SNSで植え付ける傾向が見られるという。