「イッセー尾形の右往沙翁劇場・すぺしゃる2024 in 有楽町」インタビュー
――そろそろ年の瀬ですが、この1年をふり返って、どんな1年でしたか? イッセー尾形 いろんなことがありましたね。こないだ、どうしても不可解なことがありまして。普通、現場に行ったら「おはようございます」って言うでしょ? でも「おはようございます」と返さないスタッフがいてね。どうしてなのかわからないけど、その若いスタッフは頑として(返事を)返さないの。「おはようございます」と言うのが損になるんだろうか? とかいろいろ考えちゃうんですね。これが時代の最先端だったら恐ろしいなと思いました。それが蔓延して、誰も「おはようございます」と言わない世界になったらどうなるんだろうと。それは怖かったですね。それが今年の(心に残った出来事の)筆頭かな。 「こっちだって言うもんか」と思うんだけど、それはそれで気分が悪いんですよ(苦笑)。「おはよう」も言わない自分になってしまうことが。そのスタッフは、最後まで言わなかったなぁ……。でも打ち上げでは監督さんと仲良くしゃべっててね。それを見たら腹が立ってきましたね(笑)。 腹の立つ時代ですよ。スマホを見ながら道の真ん中を歩いてたり……(苦笑)。時代は「自分対 自分」の時代なんですね。電車でもいまは、みんなスマホをのぞいてるでしょ? 昔のようにつり革につかまってポケーっとする時間がなくなったんだよね。せめて劇場くらいはポケーっと芝居を観てほしいですね。 ――「自分 対 自分」の時代とありましたが、一人芝居はイッセーさんが“誰か”を演じ、お客さんはイッセーさんのことだけでなく、イッセーさんが演じる誰かが舞台上で向き合い、対話している別の誰かのことも想像しながら見ることになります。いまの時代に抗う気持ちがあるんでしょうか? イッセー尾形 「抗う」というよりも、人間というのはいつの世も、そうやっていろんな想像をするものだということ、それを共有したいですね。その共有がないと一人芝居は成立しませんから。その再確認をしているのかな? 笑いに昇華させながら。特にこういう時代だからこそ。 取材・文・撮影:黒豆直樹 ヘアメイク:久保マリ子 スタイリスト:宮本茉莉 衣装クレジット:KHONOROGICA・CITERA <公演情報> 『イッセー尾形の右往沙翁劇場・すぺしゃる2024 in 有楽町』 公演日程:2024年12月6日(金)・7日(土)・8日(日) 会場:有楽町朝日ホール