何を積む?「荷台」が広げる可能性 イネオス・グレナディア・クォーターマスターへ試乗 エンジンはBMWの直6
全面的に防水の車内 トルクフルなディーゼル
グレナディアの車内は、全面的に防水。排水口が付いており、試乗車の場合は、フロアをホースの水で丸洗い可能だという。そもそも、カーペットはオプションだ。 ステアリングホイールやシートなどはレザー仕立てで、無骨なイメージをいくらか和らげている。それでも、雰囲気はミリタリー感に溢れている。これが好きだという人は、少なくないと思う。 後席側は、背もたれが起き気味。荷台を優先してリクライニングはほぼできず、大人がゆったり過ごせる場所とはいえない。 試乗した3.0Lディーゼルターボは、回転数を問わずトルクフル。レスポンスも良く、特有の味わいがある。BMW由来だから、パワーユニットとして間違いはないだろう。 8速ATは至って滑らか。オフロードで低いギアへ固定するなど、必要に応じて、ドライバーが任意に変速させることも可能だ。 今回の試乗では余りスピードを上げられず、操縦性をしっかり確かめることは難しかった。それでも乗り心地はしっとり落ち着き、安定感は高く感じられた。 ステアリングは、ロックトゥロック3.85回転。セルフセンタリング性が穏やかで、ゆったりした反応だが、これも特徴の1つといえる。 堅牢性を重視して作られた、本格派の大型オフローダーだから、燃費は優れない。3.0Lエンジンには、ハイブリッドも載っていない。ディーゼルターボのカタログ値は、8.6km/Lとなっている。
出色のオフロード性能を持つピックアップ
今回は、シリアスな悪路も試すことができた。メルセデス・ベンツGクラスのように運転席からの見晴らしは良好で、走破性は相当に高い。ただし、最小回転直径が14.5mと小回りは利かず、狭い場所では前進を妨げる理由になりそうだ。 新しいランドローバー・ディフェンダーと違って、ボンネット直下の路面状況を映すカメラなどは備わらない。それでも、筆者はまったく手を焼くことなく、オフロードコースを走破できた。ジープ・ラングラー・グラディエーターのように。 イネオスは、可能性に溢れた荷台をグレナディアへ与えることで、多用途性を拡大。従来以上の訴求力を獲得できている。英国価格はプレミアムなものだが、堅牢な設計のハードウエアや、特有な雰囲気のインテリアは、それを納得させるのに充分だろう。 オンロード・マナーが優れるわけではない。それでも、都会派な高級SUVのオーナーが目指そうとは思わない場所へも、果敢に挑める許容力は間違いない。 豊かなパワーに出色のオフロード性能、使えるピックアップトラックというパッケージングが、魅力的に思えるのは筆者だけではないはず。クォーターマスターの登場で、イネオスというブランドが一層強固になったともいえる。 ◯:圧巻の悪路性能 堅牢で秀でた実用性 △:リラックスできないリアシート 一般的なダブルキャブ・ピックアップトラックより高価
イネオス・グレナディア・クォーターマスター(英国仕様)のスペック
英国価格:6万6215ポンド(約1285万円) 全長:5400mm 全幅:1943mm 全高:2019mm 最高速度:159km/h 0-100km/h加速:9.8秒 燃費:8.6km/L CO2排出量:-g/km 車両重量:2740kg パワートレイン:直列6気筒2993cc ターボチャージャー 使用燃料:軽油 最高出力:248ps/3250-4200rpm 最大トルク:56.0kg-m/1250-3000rpm ギアボックス:8速オートマティック(四輪駆動)
マット・プライヤー(執筆) 中嶋健治(翻訳)