ゲームが苦手だった「アイドル」が『ストリートファイター6』にどハマりして、大会にまで出場するワケ
「ストリートファイターのコスプレをやりたいです!」 『にっぽんワチャチャ』所属のアイドル、鈴木Mob.さんとの打ち合わせで飛び出した一言に、FRIDAYのグラビア担当編集は思わず眉をひそめた。いくらゲーム好きと言われても、版権の問題もあるし……。 【写真】アイドルVS.『ストリートファイター6』ディレクターのバトル勃発! 「万が一、OKが出たらやりましょう」 それから数ヵ月──10月31日発売号の『FRIDAY』で『ストリートファイター6』との異色のコラボが実現した。 実は今回の企画は、ストリートファイター6のディレクター・中山貴之さんと鈴木Mob.さんが知り合いだったという縁があって成立した。世界売り上げ400万本を突破した大ヒットゲームの作り手と、バズりまくる破天荒アイドル――クリエイティビティ溢れるふたりはどんなところに共鳴したのだろうか(対談第1回)。 ◆号泣しながら白玉をこねる動画 中山:Mob.さんを知ったきっかけは、YouTubeにアップされていた「号泣しながら白玉を作っている動画」でした。普段は廃墟とか、異国の食べ歩きの動画を見ていたのに、いきなりおすすめに出てきたんです。 鈴木:上京したばかりでホームシックになっていた時に撮った動画です。実家が白玉屋をやっていたので、「帰りたいよ」と言いながら白玉をこねて食べる動画を……。 中山:すごい発想ですよね(笑)。その動画で興味を持って、まずはサイン会のイベントに行きました。たまたま打ち合わせ場所が会場と近く、いま行けば「白玉作ってる人」がいるんやなと思いまして。 早く到着したので座って待っていたら、Mob.さんを発見したんです。遅刻をされたのか、いっPさん(事務所社長)に怒られていた。気まずそうにバックヤードに行かれる時にすれ違って会釈をしていただき「めっちゃいい人だ」と思った記憶があります。 鈴木:私は中山さんからSNSでフォローされた時に、「誰だ、この有名なおじさんは」と思ったのを覚えています。実はゲームにも疎くて、CAPCOMと言われてもピンとこなかった。 その後、ゲームのグッズをいただくようになりました。キャラクターがぜんぶ可愛かったので、中山さんに言わずにストリートファイター6をこっそり買いました。もともとゲームは苦手なんですが、世界観も作りこまれているしキャラクターの魅力や背景も詳しくて。気づいたらハマっていました。 ―中山さんのストリートファイターとの出会いは? 中山:原体験はストリートファイターⅡでした。小学校の時、隣町から転校生がやってきて、ストリートファイターがきっかけで仲良くなった。筐体のある遠くの駄菓子屋まで、自転車を漕いで通っていました。 Mob.:私はゲームをほとんどやっていなかったので、ハマると思ってなかったんですよ。でも対戦格闘の前にアドベンチャー要素もあって、そっちからハマっていきました。ストーリーが面白くて、進めていくと「格ゲーとはなにか」「強さとはなにか」に迫っていく。自分自身も、いつの間にか格ゲーとして向き合うようになっていきました。 中山:(製作者としては)狙い通りでした。ストリートファイターは今年で37周年ですが、自分たちが遊んでいた頃はただ対戦するだけのゲームでした。やったら面白いけど、そこまでいくプロセスが用意されていなかった。いまのお客さんからすれば「どうやって楽しむのかわかりにくいゲーム」だったので、対戦の前にキャラクターを好きになってもらうためのモードを作ったんです。 Mob.:私は豪鬼(ごうき)がいちばん好きです。豪鬼しか勝たん。 中山:作ってる側からすると、どんなところが刺さったのかわからない。豪鬼を推し始めた時、なんで? と思いました(笑)。 ◆キャラクターを好きになってほしい Mob.:まずビジュアルがタイプ、かっこいい。身体が大きい男性、超強そうな男性が好きなんですよ! 毛の感じも、完全にうちで飼っている猫のポテちゃんにそっくりなんですよ。 中山:似てますね。毛の色もそっくり。 Mob.:タイプの男性でもあり、猫にも似ている。しかも強くて圧倒的なパワーの持ち主なのに、自分でおにぎりを握るという繊細さも持っている。そんなギャップが愛おしい。火力が高くて、最初のほうは勝ちやすいという魅力もありますね。 中山:動きは速いけど、打たれ弱いキャラクターです。 Mob.:体力がないのは私と同じですね。自分と重ねちゃいます(笑)。 中山:ワールドツアーを作る時には、キャラクター自体を好きになってほしいという思いがありました。豪鬼はいままで、「素性がわからない強いおじさん」でしたが、実は子供に果物を売っている設定画だけがあったんですよ。そうしたところから掘り下げて、より多角的に好きになってもらうにはどうすればよいかを考えました。 たとえば、おにぎりを自分で握るというのは生活感がありますよね。人は、自分との繋がりがないキャラには愛着がわきにくいんです。自分と一緒だと思うような接点ができて初めて、キャラクターを好きになる。エイリアンが急に出てきても仲良くなりたいと思わないけれど、エイリアンがおにぎりを握っていたら……。 Mob.:かわいい! 中山:よりキャラクターを理解してもらいやすくするために、シナリオライターなどいろんなチームと試行錯誤しました。 Mob.:中山さんの思うがままになりました(笑)。 中山:ありがたいお客さんです(笑)。 ―中山さんの好きなキャラクターは誰ですか? 中山:小学生の時やっていたストリートファイターⅡはキャラクターが8体しかいなくて、同キャラ対戦ができなかったんです。自分は後からグループに参加したので、他の人が使っているキャラは使えなかった。ダルシムかガイルしか選べなくて、一緒に合流した友達と奪い合いになって、じゃんけんで勝ってガイルを選びました。 Mob.:じゃんけんに負けていたら、ダルシム推しになっていたんですね。 中山:実はガイルとダルシムはキャラクター的にも強かったので、「強キャラばっか使ってずるいやん」とよく言われました。「いや残っていただけだから。好んで選んだわけじゃない」という言い訳をしていましたね。 ストリートファイター6ではマリーザも使っています。自分が前作から作りたかった「かっこいい女」のキャラクターです。本業はジュエリーデザイナーというギャップもあります。 Mob.:すごく強いのに、殴った相手の顔にハートがつく。めっちゃかわいい!
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