『スカイキャッスル』比嘉愛未が一番“まとも”なお母さん? 矢印が混線し過ぎの人間関係
子どもを自己実現の道具にしようとする親たちの魂胆や事情と、非常に入り組んだ人間関係が明らかになった『スカイキャッスル』(テレビ朝日系)第3話。 【写真】『テセウスの船』ではみきおを演じていた柴崎楓雅 まずは受験コーディネーター・九条彩香(小雪)との再契約に漕ぎ着けた浅見紗英(松下奈緒)から。経歴詐称どころか名前も変えて全くの別人として生きてきた紗英だが、その詐称について夫の英世(田辺誠一)とその母・雪乃(藤真利子)にはどうやらバレているらしい。だからこそ、なんとか娘・瑠璃(新井美羽)を帝都医大付属高校合格に導き、義母から認められたい一心なのだろう。 さらにややこしいことに瑠璃が好意を寄せる南沢青葉(坂元愛登)が気にかけている山田未久(田牧そら)は、もしかすると父親が英世の可能性まで浮上した。雪乃がかつて息子の結婚を阻止しようとした“学歴のない若い看護師”というのが今帝都病院に入院している未久の母親・希美 (映美くらら)だ。こんなに矢印が混線しているなんて恐るべしスカイキャッスル界隈! さらには、瑠璃の受験サポートが第一優先の母親に構ってもらえず寂しい思いをしているのが妹の真珠(白山乃愛)で、彼女がゆくゆく紗英にとっての弱点であり綻びになっていきそうだ。親に見てもらえない寂しさやストレスから万引きしていたところを南沢泉(木村文乃)に助けられ、そこから交流が始まる。瑠璃とライバル関係にある未久に真珠が勉強を教えてもらうという接点ができ、ゆくゆく真珠が未久のピンチを救ってくれる存在になり得るだろう。 医師を目指しており奨学金を受けるためにも高校の推薦枠を狙う未久は生徒会長への立候補を決めており、ここでも瑠璃と競い合うことになりそうな展開が見えている。九条から唆されたのもあり、人望からして確実に当選有力な未久のスキャンダルを探していた紗英は、彼女が母親の入院費を稼ぐためにクラスメイトの課題を代行している秘密に行き着く。紗英がこの未久の秘密をどんなタイミングで切り札として出してくるのか注目だ。 続いて、第3話で大きな動きを見せたのがモラハラ夫・二階堂亘(鈴木浩介)に正々堂々対抗した妻・杏子(比嘉愛未)だ。そもそも亘はどうやら杏子の父親のオペのせいで指が思うように動かなくなったらしく、エリート外科医の道を絶たれたと言う。自身の叶えられなかった夢を息子・翔(柴崎楓雅)に一方的に託し、教育虐待する亘の姿には、似たようなケースで子どもが親を殺害するに至った悲惨な実際の事件がいくつか思い起こされるほどだ。 息子の翔役を演じる柴崎は『テセウスの船』(TBS系)で非常に難しいキーパーソン役となった加藤みきお役を見事熱演し強烈なインパクトを残していた。本作でも父親に抑圧されながらも、母親のことは常に気に掛ける心優しさ滲むキャラクターを好演している。 亘の出張中に牢獄のようだった息子の勉強部屋の壁に穴を開け、壁紙を張り替えて光を取り入れる杏子の姿はとても頼もしかった。他人の蹴落とし合いと根回しが当然の本作の世界観の中では、杏子の正攻法での突破がより一層清々しいものに思える。 そして杏子は他のママ友とは異なり、息子を医師にさせることだけが正解でも正義でもないと考えているようで、すぐに様々なことを公私混同しがちな紗英や夏目美咲(高橋メアリージュン)をいなすような場面も見られた。今後、最も泉と意気投合していく役どころになりそうだ。 あまりに近場で繰り広げられる人間関係の窮屈さに驚かされると同時にむせ返りそうになるのを抑えつつ、それぞれどこでどう点と点が繋がっていくのか今から注目したい。
佳香(かこ)