損保ジャパンが最終報告書を公表の裏で…ビッグモーター『ロイヤルファミリー』を含め退職者が続出中
1月16日、損保ジャパンの親会社であるSOMPOホールディングス株式会社は第三者からなる社外調査委員会から調査報告書を受領し公表した。この調査はビッグモーター社の保険金不正請求に関する一連の経緯や不正発覚後の対応などをまとめたもので、’23年7月26日より調査が進められてきた。同年10月10日に公表された「中間報告書」に続く最終報告書となる。詳細は損保ジャパンの公式サイトにて公開されている。 【衝撃の内部写真】すごい…! 兼重宏一前副社長「役員たちとゴルフを満喫」の素顔写真 筆者も公開されてすぐ最終報告書を確認した。中でも気になったのは、修理代金の算定などを行う「アジャスター」としてビッグモーターに出向していた社員たちの関与である。今までの取材において、複数の関係者からビッグモーターに出向していたアジャスター資格を持つ損保ジャパン社員の大半は、優秀で正義感の強い方々だったと聞いている。実際に報告書の中でも、 《関係資料等の精査、ヒアリング等の結果、出向者が本件不正請求に関与していた事実は認められなかった》 とある。しかし、その一方で報告書には全く触れられなかった存在がある。それが、損保ジャパンが委託したとされる会社外部のアジャスターだ。中には、にわかには信じがたい内容もある。ビッグモーターの元社員が明かす。 「損保ジャパンから派遣されたアジャスターによる勉強会がたびたび開催されており、その頃から不正行為が目立つようになってきました。ウチでは、グルーガンにセットするスティックを損傷した車に擦り付けてまるで傷がついているような細工をしていました。ほかにも右フロントだけの損傷なのに左フェンダーのバンパー隣接部にわざと傷をつける工作をするなど傷を増やす細工はほぼ毎日の光景でした。最初は工場長だけの行為でしたが、入庫台数が増えて、私たち新人スタッフも撮影などを手伝わされるようになりました。もちろん、それがアジャスターからのアドバイスだという確たる証拠はありませんが……」 また別の関係者は、損保ジャパンに関わるアジャスターとビッグモーター工場長との依存関係についても語った。 「損保ジャパンが依頼したアジャスターが板金工場を訪れる機会が増え、そのうち自家用車のオイル交換やタイヤ交換などの整備を行うといったことが増えていった。工場長は『いつもお世話になっているからこれくらいしてやるんだ』と言っていました。それが、だんだんとエスカレートして、損保ジャパンのほかのアジャスターの車を無料で塗装させられたり、さらにその知人の車の整備までやらされたりするようになりました。現場は損保ジャパンのアジャスターに対して嫌悪感を持っていましたね」 外部のアジャスターであれば、それは報告書に出てこなくても、また報告書に出てくる出向社員が知らなくても仕方ないことだろう。ビッグモーターが行ってきた保険金不正請求は、その規模からも損保会社のアジャスターの関与なしには考えられない。損保ジャパンだけに留まらず、各損保から派遣された外部アジャスターの不正関与の実態が追及されることは、今後ないのだろうか……。 一方のビッグモーターでは、昨年12月初旬に、’24年1~3月の新たな給与体系が発表された。その内容はマージンカット、冬のボーナスなしと厳しいものだった。その結果、ビッグモーターでは退職する社員が続出したという。現役社員が明かす。 「12~1月で320人ほど辞めました。12月末でついに、兼重宏一前副社長(35)とともに不正体質を根付かせた『ロイヤルファミリー』の2名の幹部もビッグモーターを去りました。部長、次長クラス、店長、主任等も続々と辞めています。引き抜きの動きもあるようですね」 一方で別の現役社員も、現場を嘆く。 「年齢の高いベテラン勢はそのまま残るしかない感じです。元社員同士で新会社を作っている例もあるようですが、あまりうまくいってないようです」 今年4月以降、伊藤忠に支援を受けるための審査の真っ最中であるビッグモーター。伊藤忠は支援に前向きと言われており、1~3月はマージンカットで給料が減っても4月以降は状況が好転する可能性もある。しかし、退職者は今後も増加すると思われる。 「伊藤忠傘下になることに、必ずしも肯定的な社員ばかりではないんです。むしろ恐れる社員もいます。4月以降、伊藤忠傘下になればこれまでとは別次元のコンプラ重視の体制となるでしょう。当然、使えない社員の解雇などもあるでしょう。新体制になって自分の居場所がなくなる前に、多少条件は悪くても同業他社に転職するほうがいいと考える人はこれからも増えるでしょうね」(同前) 新年を迎えても、ビッグモーター問題の余波はまだまだとどまるところを知らない。 取材・文:加藤久美子
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