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重力波の証拠第1号は「連星パルサー」の観測だった
1974年に電波天文学者のラッセル・ハルスとジョセフ・テーラーがとても面白い天体を発見しました。その天体は「連星パルサー」とよばれるものです。 パルサーおよび連星パルサーという天体に関する詳しい説明は以降の記事で紹介しますが、ここでは、パルサーとよばれる星は、強力な電波を周期的に放っていること、連星とは2つの星が重力でお互いに引きつけ合いながら、互いの周りを公転する天体系とだけ知っていれば、以下の説明を理解するには十分です。 さて、連星パルサーからの重力波そのものは、いまでも検出されていません。しかし、ハルスとテーラーによって、連星パルサーの公転周期の減少が観測されたのです。 たとえば、スマホでは、充電して蓄えた電気的なエネルギーを電磁波(電波)に変えて送信しています。あるいは、テレビ局は電力を用いてテレビ電波を送信しています。似たことが、重力波にも当てはまります。蓄えたエネルギーを重力波で送信するのです。 一般相対性理論によれば、先ほどの連星パルサーの周りの時空は曲がっています。そして、連星をなす2個の天体は互いの周りを公転するため、その時空の曲がり具合は時間変動します。これにより重力波が生じます。 そして、重力波が遠くへ広がるにつれて、エネルギーが外に運び出されます。この結果、連星パルサーの持つエネルギーは少しずつ減少します。エネルギーが減少する連星は、星どうしの距離が短くなります。つまり、1回公転するのにかかる時間(公転周期)が減少するのです。 この公転周期の減少が実際に観測され、その測定結果が非常に良い精度で一般相対性理論に基づく計算結果と一致しました。この功績から、ハルスとテーラーは、1993年、ノーベル物理学賞を受賞しました。 この連星が作る重力波は、さらに大きな発見へとつながっていきます。これについては、以降の記事でくわしく見ていくことにしましょう。 ---------- ----------
浅田 秀樹(弘前大学 理工学研究科 宇宙物理学研究センター センター長・教授)