プレミア12の各国の本気度とは
各国、そうして苦しさが覗くが、では、どうしてこんな顔ぶれになってしまったのか。 キューバの場合は、主力選手が次々と亡命し、有望な人材を欠く、という面がある。本来ならエース候補だったノルヘ・ルイスは今年の春に亡命。ブラディミア・グティエレスも今年2月のカリビアン・シリーズの最中に亡命した。結果、特に投手の構成は、無理を強いられている。 ドミニカ共和国などは、メジャーリーガー、また、マイナーにいても、将来有望と目され、各球団の40人枠に登録されている若い選手らの出場が認められず、こういう陣容になった。 もっともこれは、プレミア12の構想が持ち上がっていたときから分かっていたこと。6月の会見で小久保裕紀監督は、「MLBの考えがまだ出ていない」と話したが、その時点で決まっていなければ、実現するはずはなく、そもそも選手派遣に関して、アメリカで話題になったことはない。 こんな話がある。今年1月に「プレミア12」の開催概要が東京で発表されたとき、FOXスポーツのジョン・ポール・モロシ記者が、大リーグ選手会の理事を務めるジェレミー・ガスリー(ロイヤルズ)に連絡を取った。大会に参加するのかどうか、選手会のスタンスを問うためだ。 ところがガスリーは、記者から教えられるまで、「プレミア12」の開催を知らなかったそうだ。 モロシ記者は、「大リーグ機構と選手会は、WBCには、各国にベストメンバーで望むよう要請をしておきながら、プレミア12に、大リーガーを派遣しないというのは、プレミア12を主催する世界野球ソフトボール連盟に失礼ではないか」と批判し、ガスリーも、「ぜひ、出たい」と話したが、現実的な問題もあるよう。 ガスリーはこう言っている。 「WBCだけでも、毎回、選手の派遣でもめるんだ。それでもまだ、ほとんどの試合が米国内で行われるから、なんとか形になる。しかし、試合が日本と台湾で行われるとなると、超えなければいけない障害がいっそう高くなる」 モロシ記者も、本当にメジャーリーガーが参加したら、それはそれで問題となると指摘した。 「選手の保険料だけで、1000~2000万ドル(約12億円から24億円)になる」 それを払えるのか、というわけだ。 こうした事情があるとなると、次回大会もメジャーリーガーの参加はハードルが高い。選手会内で話し合われた形跡がなく、そもそも大リーグ機構から、選手会に相談が持ちかけられたかどうかさえ、怪しい。 翻弄されたのは、多くの大リーガーを輩出する中南米各国だ。 こんな選手を選んだのか? と批判されても、「俺たちに言うな」といったところだろう。 ほぼベストで臨む日本と、かろうじて体裁を整えた、本来なら優勝を争える中南米各国。極端な温度差の裏には、この大会が抱える根本的な問題が投影されている。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)