柴崎コウ、フランス語猛レッスンで臨んだ映画「蛇の道」 パリ暮らしを現地で体になじませ
「蛇の道」は黒沢清監督(68)が、平成10年の同名自作の舞台をパリに置き換え、フランスのスタッフでまったく新たに撮り直したサスペンスだ。主演は、柴咲コウ(42)。謎を秘めた難しい役。しかも、せりふは、ほぼフランス語だが、見事に演じきった。 【写真で見る】映画「蛇の道」のワンシーン 映画は、パリで働く日本人の心療内科医が、フランス人男性に手を貸し、拉致を実行する不穏な場面から始まる。そして最後まで不穏なのが、いかにも黒沢作品らしい。 もとは哀川翔主演の報復劇。柴咲の主演で、テイストはがらりと変わった。舞台をパリに変え、西島秀俊(53)が出てくる場面などを除き、フランス人俳優相手にフランス語のせりふが飛び交う。 「なぜ、私なんだろう?」。出演依頼に柴咲は首をひねった。フランス語ができるわけでもない。直接尋ねたら、黒沢監督は「目の力にひかれて」と答えた。確かに劇中、極めて印象的な目の場面が出てくる。 なにはともあれ、あこがれのパリでの撮影だ。「ラッキーと思って引き受けたのですが…」。フランス語のせりふには、やはり苦戦したと苦笑い。 撮影の半年前からフランス語のレッスンを始めたが、集中して取り組めたのは3カ月ほど。10年パリに住んでいる心療内科医役に説得力をもたせるため、撮影1カ月前から現地でアパートを借り、パリ暮らしを体になじませた。 今回は撮影現場のスタッフも黒沢監督以外、全員フランス人だ。撮影の進め方など、やはり日本とは違った。 「でもね、心地よかったです。日本では〝場の空気〟を読んでしまいがちですが、そういうのがなかった。良いカットを重ねることに全力で取り組めて、やりがいしかなかったです」 撮影中は、エッフェル塔にもセーヌ川にも見向きもせず、撮影現場とアパートを往復した。ただ、「撮影が終わってから観光できました」とにっこり。 謎の多い役。なぜ、こういう行動をするのか。黒沢監督に尋ねた。返ってきた言葉は、「別に理由はないんですけどね…」。やぼな質問をしてしまった。 「想像力をかきたて、懸命に主人公の〝感情の波〟を組み立てました。でも、結局は監督の手の中で転がされていたような気もします。〝蛇の道筋〟を作ったのは監督なんですよね」