1日8500円でのクマ駆除要請にハンターが辞退も…市町村へのHBCの独自アンケートでわかった自治体の本音「国や道として一定の報酬の基準を」
北海道放送(株)
クマ対策のハンター不足を解消できるのか?二刀流の「ガバメントハンター」に注目です。 北海道根室市では、軽トラックにクマが突進。空知地方の雨竜町では、道職員がクマに襲われけがをする被害も…。 北海道内のクマの個体数は、32年間で2.3倍に増えたと推定されています。クマの駆除には、ハンターが欠かせませんが、ハンター側が自治体への協力を断るケースも出てきました。 各市町村へのアンケートから見えてきたクマ対策の現状をもうひとホリします。 4月、空知地方の奈井江町が、地元の猟友会にクマの駆除などへの協力を要請をしましたが、猟友会側は人員不足や報酬の額を理由に要請を断りました。 奈井江町の報酬額の案は、出動手当が1日8500円。猟銃の発砲で1800円加算というものです。 北海道猟友会砂川支部奈井江部会 山岸辰人部会長 「(報酬は)高校生のコンビニのバイト以下。命がけの仕事もこんな“びた銭”でやれと言うのという話」 町は報酬の増額を検討していますが、猟友会側との協議は進んでいません。 HBCでは、クマ対策の現状について、北海道内の市町村にアンケートを行い、115の市町村から回答が寄せられました。 ハンターへの報酬については…。 アンケートへの回答 「出動したら時給1500円」 「緊急時は1日8時間で4万円、クマを捕獲したら1頭につき10万円」 報酬の基準も、時給や日給で計算する、活動内容によって金額を変えるなどさまざまで、報酬の仕組みは自治体ごとにすべて違う内容でした。 北海道猟友会は、「各地とも自治体とハンターが話し合って決まっているので、違いがあるのはやむをえない」としています。アンケートでは自治体からこんな本音も…。 アンケートへの回答 「国や道として、一定程度の報酬の基準を設けてほしい」 道のヒグマ保護管理検討会の座長を務める酪農学園大学の佐藤教授は…。 酪農学園大学 佐藤喜和教授 「地域によってクマの生息密度が違う。クマの出没するパターンも違えば原因も違う。従事する人の数や出没回数、市町村の財政状況などが絡んでいるので、なかなか単純に一律にすればいい、解決するという問題でもないと思います」 アンケートでは駆除に関する今後の課題も聞きました。多くの市町村があげたのは… アンケートへの回答 「ヒグマを駆除できるハンターが高齢化している」 「若手ハンターの確保、育成が急務」 先週、道の検討会では、クマの増加を抑えるため、年間の捕獲目標を「メスグマ520頭」とすることが提案されましたが、この目標も、ハンターの確保なしには達成できません。 こうした中、三笠市では「ガバメントハンター」に着目しました。 三笠市農林課 豊口哲也課長 「(ハンターの)担い手を確保するところが喫緊の課題だったので募集した」 三笠市の農林係に勤務している髙崎梨徒(りと)さんは、おととし、鳥獣対策を担う地域おこし協力隊員として採用されました。公務員と同時にハンターも務める「ガバメントハンター」です。 三笠市農林係(ガバメントハンター) 髙崎梨徒さん 「クマの通報が入ったら席を立って地名だけ聞いて車で出発するという感じが多い」 市民に危険が差し迫る場合には、猟友会と協力し、猟銃やわなでクマを駆除しています。 この日は、今年クマの目撃があった場所のパトロールへ。猟銃を背に現場に向かい、クマの監視のために取り付けておいたセンサーカメラをチェックします。 三笠市農林係(ガバメントハンター) 髙崎梨徒さん 「こういうことを毎日続ける、車で見回るだけでも労力かかるのに、そういうことを猟友会にお願いするとなると皆さん仕事を持たれているし、専門職(の市職員)じゃないとやりづらいところはあると思います」 佐藤教授は、クマに対しては自然災害と同じように備えるべきだとして、ガバメントハンターの普及に期待しています。 酪農学園大学 佐藤喜和教授 「(クマに)日頃から備えて危険箇所を明らかにして、そこへの対策を打っていく。緊急時の対応ももちろんですし、平時から出没を防ぐ、出没しにくい地域づくりをするとか、そういうリーダーの役割をできるような人を(行政が)雇用していくというのが、今後大事になっていく」 公務員でありながらハンターでもある、というこのガバメントハンターは、三笠市ではおととし始めた取り組みで、道内でもあまり例がありません。 市町村アンケートの中では、ガバメントハンターとは異なる形でクマ対策の体制をとるマチもありました。 千歳市のクマ防除隊は、地元猟友会が選抜したハンター13人を市の非常勤特別職員として委嘱しています。 普段は別の仕事をしていますが、クマ出没の際は、市の職員の立場で出動します。傷害保険なども市が負担します。こうした形で連携を強めているということです。 各地で出没するクマについて、「知ることで防げる被害」があります。 HBCのインターネットサイト、「クマここ」では、道内から集められた教訓や知恵をご紹介しています。 https://www.hbc.co.jp/contents/kumacoco/ 今回のアンケートと取材にご協力いただいたみなさん、ありがとうございました。
北海道放送(株)
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