趣里、15歳で単身イギリス留学もアキレス腱断裂で夢を断念、俳優デビューは金八先生SP「緊張感しかなかったです」
NHK朝ドラ『ブギウギ』でヒロインの福来スズ子を演じ、日本中を元気にさせてくれた俳優・趣里。今夏シリーズ2が放映された『ブラック・ペアン』では一点、クールな主任看護師を演じ、表現の幅の広さを見せつけてくれた。幼い頃からバレリーナを目指していた彼女が俳優へと転機(チェンジ)となったきっかけとは? 10月14日スタートのドラマ『モンスター』(カンテレ・フジテレビ系)で主演を務め、更なる飛躍を続ける彼女の“THE CHANGE”に迫る──。【第1回/全3回】 ■【画像】15歳でイギリス留学した趣里、月10ドラマ「モンスター」で挑む弁護士役 『ブギウギ』で見せてくれたパワフルな歌と踊りが記憶に新しい趣里さん。そんなイメージとは違い取材時は”静“な雰囲気。纏ったANREALAGEのグレーのジャケットも体の線を出すようなフイットした感じはなく少し大きめな感じで、『ブギウギ』で演じたスズ子のような派手目な感じのメイクでもなく、髪型も落ち着いたボブな感じが一層そんな感じを抱かせているのかもしれない。 もはや国民的俳優の一人ともいえる趣里さんだが、4歳からクラシックバレエに打ち込み、プロのバレリーナを目指し、15歳で単身イギリスに留学した。不安はなかったのだろうか。 「私の中ではバレエをやりたいという気持ちが強く、絶対にイギリスへ行くと思っていました。もし不安という気持ちが大きかったら、たぶん行ってなかったと思います。というのも、私、心配性なところがあるので。言葉の面でも特に不安は感じていませんでした。英語は勉強していましたが、実際に行ってみたら全然違うと感じることはありましたけど(笑)」
俳優デビューは『金八先生』の4時間スペシャル
しかし、留学して2年ほど経った時に大きな転機が訪れる。アキレス腱断裂という大怪我に見舞われたのだ。やむなく帰国し、バレリーナの夢を断念した。 「バレエでは辛く、どうしようもない経験をしました。でも、その後舞台を観た時に“こういう世界があるんだ”という気持ちになることがあったんです。辛い気持ちを忘れられたといいますか、それまで培ってきたバレエでの経験が、この世界だったら活かせるんじゃないかと思ったんです。舞台を観た時に私自身が救われた気持ちになったように、演技の世界でだったらそれを多くの人に提供できる、エンターテイメントの素晴らしさを実感して、それから演技に興味を持ち始めたんです」 バレエを通して、表現することの苦しさを誰よりも判っていた趣里さん。演技の世界でどれだけのことを表現できるか判らなかったのでレッスンを受けることを決めた。 「『アクターズクリニック』という演技学校でレッスンを受けました。この時、塩屋俊先生に出会ったんです。俳優で監督もされていてこの学校を主宰していた塩屋さんが“お前はやった方がいいから。大丈夫だから、絶対この道が良いよ”って励ましてくださって、そこでやってみようという気持ちになれたんです。実際、やってみて楽しかったというのもありましたし」 そして2011年にドラマ『3年B組金八先生ファイナル~「最後の贈る言葉」4時間SP』で俳優デビューを果たした。 「もう緊張感しかなかったです。何が何だかわからなかったです。でも、そんな中で金八先生役の武田鉄矢さんがすごく優しく話しかけて下さったので、少しだけ気持ち的に楽にはなりました」 その後は、NHK朝ドラ『とと姉ちゃん』(2016年)を経て、2018年に公開された映画『生きてるだけで、愛。』に出演。引きこもり状態の寧子とゴシップ週刊誌の編集者で恋人の津奈木(菅田将暉)との不器用な愛を描いた物語だ。本作のヒロイン・寧子を演じた趣里さんはその体当たりな熱演が評価され、第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。 「新人賞を戴きましたが、それによって劇的に何かが変わったということはないです。私の場合、毎回その座組の中で、今の自分の状態で、どれだけのことを最大限出来るかという感じです。もちろん、今でも『生きてるだけで、愛。』のことを話していただけることはすごく嬉しいですが。私自身が、その時その時でいただけた役を全力でやれれば……というタイプなんです。だから、“演じたい役はありますか”とよく訊かれることがあるんですど、特には無いんです」 趣里さんは俳優としての道を粛々と進んでいるようだ。 趣里(しゅり) 1990年9月21日生まれ、東京都出身。O型。2011年に俳優デビュー。2024年映画『ほかげ』でキネマ旬報ベスト・テンにて主演女優賞を受賞。近年の主な出演作は、NHK朝ドラ『ブギウギ』、TBS『ブラックペアン シリーズ』などのドラマや映画『零落』、『愛にイナズマ』(2023年)などがある。 鈴木一俊
鈴木一俊