おぎぬまXのキン肉マンレビュー【コミックス第32巻編】~『キン肉マン』という作品におけるゆでたまご先生が用意された最後の"遊び"~
熱き"闘将"の闘い、これにて終劇!! そんなドラマを経てやっと始まる次鋒戦、ラーメンマンVSプリズマンもこれまた見どころ多い名勝負でした。まず目を引くのはジャングル・ビッグ・ジム摩天楼デスマッチと銘打たれて設営された特殊リング。ここまで来てまだ新たなルールの試合を読者に提示してくれるゆでたまご先生の創造性に感服しきりなのですが、これにはさらに大きな意味が隠されていました。 それはこの闘い、おそらくラーメンマンにとっても最後の試合になるということもあってか、それまでは意図的にスピンオフ作『闘将!!拉麵男』でしか見せてこなかった超人一〇二芸の技を一挙解禁。烈火太陽脚、回転龍尾脚、百戦百勝脚など魅惑の大技の数々が怒涛のように放たれていきます。それらの技を最大限に堪能する上でも、この特殊リングは最適の舞台だったのではないでしょうか。 そして、プリズマンが相手となるとやはり問題は、例の殺超人光線レインボー・シャワーの対処法ですが、この難題もラーメンマンは超人拳法で乗り越えていきます。レインボー・シャワーの製造庫であるプリズマンのレンズボディをラーメンマンは心突錐揉脚で蹴り砕いて完全攻略。ただ倒すだけではない、こうして相手の必殺技ごと破らないと倒したとはいえない、といわんばかりのこの勝ち筋の作り方には、やはり本作に骨の髄までしみ込んだプロレス魂を感じますね。 その勢いのままラーメンマンは次巻でプリズマンを打倒、その勝利はこれまで絶対に揺るがなかった大将フェニックスの自信にも異変を生じさせていくのでした。次巻レビューではその後の中堅戦とそこでついに姿を見せる驚異の新超人について、熱く語らせていただきたいと思います! ●『キン肉マン』4コマ ●こんな見どころにも注目! フェニックスが内に秘めた卑劣さは先の準決勝戦から薄々見え始めてはいましたが、この決勝戦からとうとうそれを一切、隠さなくなってきたのは非常に興味深いところです。公衆の面前で、こうして堂々と自分たちの悪事を公開しながら罵倒を続ける徹底ぶり。これに誰も異を唱えないのが子供の頃の僕は不思議で仕方なかったんですが、そこは策士である彼のこと。おそらく運営への手回しもぬかりなくやっていたんでしょう。このパソコンには悪事の証拠が詰まってるはずなんですが......。 ●おぎぬまX1988年生まれ、東京都町田市出身。漫画家。2019年第91回赤塚賞にて同賞29年ぶりとなる最高賞「入選」を獲得。21年『ジャンプSQ.』2月号より『謎尾解美の爆裂推理!!』を連載。小説家としての顔も持ち、『地下芸人』(集英社)が好評発売中。『キン肉マン』に関しては超人募集への応募超人が採用(JC67巻収録第263話)された経験も持つ筋金入りのファン! ミステリ小説『キン肉マン 四次元殺法殺人事件』、『爆ぜる怪人 殺人鬼はご当地ヒーロー』(宝島社)も好評発売中 漫画/おぎぬまX 構成/山下貴弘 ©ゆでたまご/集英社