舘ひろし、渡哲也が共演し、「大都会」シリーズの系譜を受け継いだドラマ「代表取締役刑事」
1976年に放送された石原裕次郎、渡哲也共演の刑事ドラマ「大都会-闘いの日々-」といえば、石原プロモーション制作としては初の本格的連続テレビ作品。脚本には、倉本聰が参加しており、重厚な人間ドラマが展開されていたが、シリーズ続編となる「大都会PARTⅡ」「大都会PARTⅢ」ではアクション路線に舵を切り、その後の石原プロの代表作であり、ド派手なアクションが語り草となっている「西部警察」シリーズへの礎を築いた。 【写真を見る】立ち姿に風格を感じさせる橘謙司(渡哲也) その後、舘ひろしのドラマ初主演作品「ただいま絶好調!」を経て、石原プロが映像制作を再開させることとなった連続ドラマが「ゴリラ・警視庁捜査第8班」(1989年~1990年放送)だ。同ドラマは、派手なアクション重視だった番組前期から一転、後期はヒューマン路線に路線変更した。そんなヒューマン路線を引き継ぐ形ではじまったのが舘ひろし、渡哲也共演の「代表取締役刑事」(1990年~1991年放送)だ。当時、石原プロの社長を務めていた渡哲也は本作について「どっしりと腰を据えた、人間味豊かな刑事ドラマを目指した」と語っていたが、それはひいては石原プロ初の連続ドラマとなった「大都会-闘いの日々-」への原点回帰という側面もあった。 ドラマの舞台は東京下町を管轄する警察署である辰巳署。橘謙司(渡哲也)が課長を務める刑事防犯課は、捜査係長の兵頭真(舘ひろし)を筆頭に、心優しき個性豊かな刑事たちが集結。彼らは日々、さまざまな事件を捜査していたが、物語は橘が記す捜査日誌を通じて語られる。共演は高松英郎、川野太郎、谷川竜、池田政典、沖田浩之ら。ちなみに「代表取締役刑事」というタイトルには「社会において市民を守る刑事は、企業で社員を守る代表取締役と同じ」という意味が込められている。 本作のメインライターを務めたのは、ドラマ「傷だらけの天使」や映画「異人たちとの夏」などで知られる人気脚本家・市川森一。初回の「昨日・今日・明日」をはじめ、「家族の肖像」「風と共に去りぬ」「哀愁」「男と女」「大人は判ってくれない」など、映画のタイトルから引用されているのも注目のポイント。また、事務所独立後、久々のテレビ復帰となった小柳ルミ子、石原軍団とはレギュラー出演をしていた「西部警察」以来、8年ぶりの共演となった三浦友和など、次々と登場するゲストも話題となった。さらに本ドラマの主題歌はB'zの稲葉浩志が作詞、松本孝弘が作曲を担当した、ギタリスト安宅美春のデビューシングル「孤独のRunaway」。疾走感あふれるナンバーがドラマを盛り上げた。 舘が石原プロに入社したのは1983年2月8日のこと。もともとはロックグループ「クールス」のヴォーカルから映画界に進出し、1976年の映画「暴力教室」でスクリーンデビューを果たした。石原プロからは「大都会PARTⅢ」の際にオファーを受けたこともあったというが、この時は断ったという。だがそれから1年後、あらためて「西部警察」の巽総太郎刑事役で出演。そこでは半年の出演で殉職降板となったが、1年後には別人の鳩村英次役でシリーズカムバック。一躍俳優として注目の存在となった。 そんな舘にとって俳優・渡哲也はあこがれであった。「西部警察」DVDでのインタビュー内でも「僕の俳優人生の中で、最初にちゃんと認めてくれたのが渡だった気がするんです。俳優なんて単純なもんで、自分を認めてくれる人のためには死んでもいいと思うわけじゃないですか」と語っていた舘。2021年の石原プロ解散後は、舘プロを立ちあげて活動を行っているが、そんな彼の俳優人生からは、石原裕次郎から渡哲也へ、そして渡哲也から舘ひろしへと、脈々と受け継がれた哲学を感じさせる。 文=壬生智裕
HOMINIS