斉藤由貴が『卒業』が若い世代に刺さっていることに「なぜだろう」としか感じられないワケ…「私には残りの時間でどう過ごしていくかのほうがずっと身近なこと」
卒業白書2024#12《後編》
「卒業」をリリースした斉藤由貴は、やがて歌手と俳優の両立に悩みながらも、その表現の違いにやりがいを見出してきた。90年代にセルフプロデュースをするようになったこと、昨今のシティポップ再評価で若い世代に楽曲を聴かれていること、そして今「卒業」を歌うことについて話を聞いた。 【画像】昨今のシティポップブームを不思議がる斉藤由貴
歌手と俳優の仕事、どちらもあったからここまでやってこれた
――斉藤さんにとって、歌手としての活動と俳優としての活動は、どういった関係を持つものなのでしょうか? 全く異なる表現なのか、それとも何か重なり合う部分があるのか。 斉藤由貴(以下同) 俳優の仕事っていうのは基本的にひとりではできなくて、たくさんのスタッフさんや他の俳優さんとチームで共同作業していくものですよね。そうすると、社会性も必要とされるし、みんなとコミュニケーションをとりながら作っていくのが前提となるものだと思うんです。 歌の場合にももちろんそういうところはあるけれど、少なくとも、いざステージに立ってしまえば、すべてをひとりで背負うことになります。そうすると、お客さんを目の前にしているとはいえ、ある種とても内向的な世界に入っていく行為でもあるんです。 お芝居は相手役や周囲との化学反応の上で物語を構築していく作業だけど、一方で歌は、3~4分の物語の中で、曲ごとに全くちがうシチュエーションを自分ひとりで担って表現していく。やっぱり、それぞれ違う種類の表現だと思うし、それぞれの素晴らしさ、おもしろさがあります。 けれど、もしかすると、そのどちらかだけをやり続けてきたのなら、どこか満たされない思いを抱くことになってしまっていたんじゃないかなと思います。お互いの活動でお互いの満たされない部分を補うことができたっていう感覚があるし、それはすごくいいことだったと思っています。 ――デビューからしばらくは、その2つのお仕事を同時並行しながら、こなしていらっしゃったわけですよね。 そうですね。この年齢になってみると、アイドルをやっていた時代に必死になって自分の歌を積み上げていった経験が宝物になっているのを実感しますね。これは忙しい只中にいたあの頃には思いもよらなかったことです。いつの間にか毎年クリスマスライブをやるのが恒例になってきたし、いまだに歌番組にも呼んでもらえて、本当にありがたいですね。 ――デビューからしばらくすると、ご自身でも歌詞を書かれるようになりますよね。 はい。2枚目のアルバム『ガラスの鼓動』から少しずつ作詞を手掛けるようになりました。小さい頃からイラストやポエムみたいなものを書いていたし、中学校では小説部っていう部活に入っていて、もともと何かを書くのが好きだったんです。それを知っていたディレクターの長岡(和弘)さんが、「由貴ちゃん、せっかくだから自分で歌詞を書いてみない?」と提案してくれました。