重度のアルコール依存症の祖母との暮らし。祖母からのキツイ言葉に介護… 過酷な家庭環境で育った少女が自分自身を取り戻すまで【書評】
虐待やネグレクトやヤングケアラーなど、幼少期に家庭で感じた痛みや苦しみは、子供の心に大きな傷を残す。『さよなら毒家族 アルコール依存症の祖母の呪縛から解放されて私を取り戻すまで』(ゆめの/KADOKAWA)は、機能不全家族で育った少女が、その傷を乗り越え、自分の道を歩み始めるまでを描いたコミックエッセイだ。「普通」の家族への憧れや絶望、家族の呪縛から自由になることへの葛藤などがリアルに描かれている。 【漫画】本編を読む
不仲で喧嘩が絶えない両親のもとで育ったゆめのさん。怯えながら過ごすゆめのさんだったが、幼稚園児の時に母親が亡くなり、祖父母の家に引き取られる。「これからはずっと幸せ」と思っていたが、本当の地獄の日々が始まる。祖母は重度のアルコール依存症で、お酒をたくさん飲んでは数日寝込んでしまうのだ。「普通」でない祖母の姿に、ゆめのさんは強い恐怖を覚える。さらに歳を重ねるごとに増える介護や世話、祖母からのキツイ言葉…そんなストレスが積み重なって、心のバランスを崩していく。 「普通」の家族・愛情を求めもがき続けるも、叶わない。そんな絶望や苦しみの中「自分が悪いんだ」と思い込み我慢を続けるゆめのさんの姿に、胸が苦しくなる。 追い詰められた暗闇のような日々。だが、ゆめのさんが結婚し家を出たことをきっかけに、徐々に光が差し始める。優しい夫と共に、自分の心と向き合い家族との距離を見つめ直していく。祖母に対する葛藤や気持ちの変化など、ゆめのさんの内面の動きがとても丁寧に描かれている。悩み苦しんだ末、自分自身が幸せになるために、ゆめのさんはある決意をする。果たしてどんな答えに辿り着いたのだろうか? その勇気ある決断を、ぜひ見届けてほしい。 著者自身の人生を赤裸々に綴った本作は、家族関係や家族との距離感に悩んでいる人におすすめしたい。ゆめのさんが自由になるまでの過程から、家族との向き合い方のヒントを得ることができるだろう。また、過酷な家庭環境の中で生き抜き、自分を取り戻したその姿は、きっと多くの人に勇気を与えるはずだ。 文=ネゴト / fumi