〈ジャパンテント〉みなし仮設で留学生受け入れ 羽咋に移った中村さん
●留学生へ「その時その時を大切に」 22日に開幕した「JAPAN TENT」(同開催委員会主催、北國新聞社特別協力)を特別な思いで迎えたホストファミリーがいる。七尾特別支援学校教諭の中村晴樹さん(39)は、穴水町内の自宅が能登半島地震で半壊となり、現在は羽咋市飯山町のみなし仮設で暮らす。今回初めて留学生2人を受け入れ、「地震では亡くなった人や壊れて取り戻せなくなったものがある。その時その時を大切にしてほしい」と被災の経験を伝えた。 【写真】歓迎式典で披露された岸田首相のビデオメッセージ=北國新聞赤羽ホール ●穴水の自宅は解体申請 「地震を経験し、今をより大切にしたいと考え、興味のあることにはどんどん挑戦してみようと思うようになった」。中村さんはホストファミリーに応募した理由を、こう語った。 中村さんは5年前に穴水町中居南に移住し、今年の元日は家族と大阪の実家に帰省中だった。1月8日に車で穴水に戻ると、見慣れた景色が一変。親しくしていた人の家が崩れたのを目の当たりにし、自宅は家財が散乱し、足の踏み場もなかった。4月末まで避難所で生活し、思い出が詰まった自宅は公費解体を申請した。 5月から移り住んだ羽咋の空き家で穴水の被害の様子を伝える北國新聞の紙面を留学生2人に紹介しながら、「穴水はとてもお世話になった場所。今は離れているが再び元気を取り戻してほしい」と願った。 ●ウクライナ出身者「日常の大切さ実感」 ウクライナ出身のトロプチン・ニキタさん(20)=日本国際学園大2年=は中村さんの話に深くうなずいた。2022年2月にロシアがウクライナに軍事侵攻を始めた際、首都キーウ(キエフ)に住んでいて避難生活も経験したという。「私も侵攻によって生活が一変した。平和や日常の大切さを実感している」と強調した。 今年1月3日に県内の知人と中能登町を訪れ、住宅の屋根の応急修理を手伝ったといい、「ジャパンテントでは被災地の現状も知りたい」と話した。 インドネシア出身のクレメン・ヴァリアン・サヌシさん(18)=文化外国語専門学校1年=は「能登半島地震のような大きな災害は想像するだけで恐ろしいが、教訓として忘れないようにしたい」と述べた。 ●ホスト家族と再会願う参加者 今回のジャパンテント参加者には奥能登の住民との再会を願う留学生もいる。2019年以来2回目の参加となるウズベキスタン出身のトランボエフ・ウミドジョンさん(27)=筑波大大学院=は「前回受け入れてくれた輪島のホストファミリーが元気か心配だ。滞在中にできれば再会したい」と期待した。 ●首相がメッセージ 金沢市の北國新聞赤羽ホールで行われた歓迎式典では岸田文雄首相のビデオメッセージが披露された。岸田首相は留学生が被災地に向けた「希望のメッセージパネル」を作成することに触れ、「留学生の皆さんには被災地に思いを寄せ、石川に息づくふるさとの心や伝統文化に理解を深めてほしい」と願った。 岸田首相は「学生ボランティアの皆さんは留学生との交流を通じて世界を学び、世界に飛び立つきっかけとしてほしい」とも述べた。 来賓の外務省大臣官房人物交流室の岩間良次室長、文部科学省高等教育局参事官(国際担当)付留学生交流室の菊地勇次室長補佐、開催委副総裁の善田善彦県議会議長、同副会長の北野喜樹県教育長、野口弘金沢市教育長が紹介された。