【テニスギア講座】プロ選手のウェアとシューズはなんで同じブランドなの? その裏側の複雑なストーリー<SMASH>
80年代後半には、テニス、バスケット、ランニングシューズで大ブレークしたナイキも、アパレル産業に参入。その最初のメインキャラクターがジョン・マッケンローです。 その後、こうしたケースが増えますが、プロ選手にとってつらかったのが、逆パターンである「ウェアブランドがシューズも販売」という状況です。満足なシューズ契約をしていた選手が、性能的にハイレベルではないアパレルブランドのシューズを履かなければならないこともありました。苦しんだ選手が、ブランドマークだけ貼り付けて使ったりしていたのも事実です。 ウッドからカーボン製ラケットへの移行期、日本ブランドも世代交代を迎えます。ヨネックスはビリー・ジーン・キング、マルチナ・ナブラチロワとラケット使用契約を結び、世界進出を果たします。 リサ・ボンダーやメリー・ジョー・フェルナンデスと契約していたミズノは、90年にイワン・レンドルと契約を交わし、彼を「フル・ミズノ化」。ヨネックスはレイトン・ヒューイットとフル契約です。 今日では、ラケットはないものの、アシックスが世界的に有名です(以前はラケットも製造)。サマンサ・ストサーは無契約で購入してまで履き続け、契約後は開発にも深く関与しました。またガエル・モンフィスはアシックスのウェア&シューズで、その高性能を世界にアピールするのに貢献しました。 ミズノもヨネックスも「ラケットメーカー」から「総合テニスブランド」に発展。アシックスはアディダスやナイキがそうであったように、シューズメーカーからウェアへも参入したブランド。日本は頑張りました。 ところが昨今は、逆現象もちらほら。「シューズ&ウェア」は切り離せない絶対条件だったものが、ジョコビッチや錦織、フェデラーなど、アパレルブランドと契約して、シューズ契約と切り離しました。 ただそれは彼らがトップであるからこそ許されたこと。下位選手ではほぼ許されず、シューズ契約にウェア着用義務が付帯するのです。この状況が変わることはないように思います。 文●松尾高司(KAI project) ※『スマッシュ』2022年3月号より抜粋・再編集