【セルジオ越後】神戸を初優勝に導いた大迫のMVPに異論なし。長谷部監督は腕の良いコックさんのようで、多くの指導者の励みになった
ハーフパンツの三戸。新人らしくて良かった
今年もJリーグアウォーズが開催された。会場の横浜アリーナは盛り上がっていたね。 MVPは大迫。得点王に輝く活躍ぶりで、神戸のJ1初優勝の原動力となった。チームを引っ張る姿勢も強く見えたし、受賞に異論はないね。 【PHOTO】シーズンを締めくくるJリーグアウォーズ。最優秀選手賞は得点王とダブル受賞のあの選手! 2年前の夏にドイツから日本に戻ってきて、怪我に苦しんでいた時期もあったけど、今シーズンは見事に復活し、半端ないカムバック、という感じだ。スーツ姿でも身体がよく絞られているのが分かった。 JリーグのMVPで気になっているのが、近年に選ばれた小林、家長、仲川、岩田らが日本代表で地位を築けていない点だ。最優秀選手になれるのだから、国内で最も輝いている選手なのに、代表で活躍できないのは意外だ。 大迫も今の森保ジャパンに招集されていない。現在33歳で、次回のワールドカップでは36歳になる年齢が懸念されているのかもしれないけど、代表チームは、その時のベストメンバーで組んでほしい。 結果を出せなくなってから、入れ替えるという考えもあるはずだ。世界に目を向ければ、メッシやクリスティアーノ・ロナウドのように、大迫よりも上の年齢でも代表で活躍しているケースは、いくらでもある。JリーグのMVPになると、代表で活躍できない――そんなジンクスが定着してしまっては困るよね。 ベストイレブンは、優勝した神戸と4位の浦和から4人が選ばれた。2位の横浜が1人、3位の広島は0人。浦和が多く見えるけど、リーグ最少失点で西川やショルツ、ホイブラーテンら守備陣が選ばれているから、それほど違和感はない。 最優秀ゴール賞を受賞した渡邊の得点は、素晴らしかった。ただ、式典ではノミネートされていた他のゴールも見てみたかった。渡邊の凄さがより際立っただろうし、観客も楽しめたはずだ。 ベストヤングプレーヤー賞に選ばれた三戸は、これからに期待したい。今回で名前を覚えたファン・サポーターもいるだろうし、注目度が上がるだろう。ハーフパンツで登場したのは、いかにも新人らしくて良かったね。 優秀監督賞に輝いたのは、ルヴァンカップ優勝で福岡に初タイトルをもたらした長谷部監督。ビッグクラブと比べて戦力が劣る福岡でも、やり方次第でタイトルを獲れると示せた。食材を活かして美味しい料理を作る実力のあるコックさんのような腕前が、高く評価されたのだろう。多くの指導者の励みになったと思う。 賞の選考は、おおむね妥当だった。選手や監督、関係者のみんな、今季もおつかれさまでした。 【著者プロフィール】 セルジオ越後(せるじお・えちご)/1945年7月28日生まれ、78歳。ブラジル・サンパウロ出身。日系ブラジル人。ブラジルではコリンチャンスやパウリスタなどでプレー。1972年に来日し、日本では藤和不動産サッカー部(現・湘南ベルマーレ)で活躍した。引退後は「さわやかサッカー教室」で全国を回り、サッカーの普及に努める。現在は解説者として、歯に衣着せぬ物言いで日本サッカーを鋭く斬る。