センバツ甲子園 光ナインに大きな拍手 /山口
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)第8日の27日、初出場の県勢・光は山梨学院(山梨)との3回戦に臨んだ。先制したものの相手打線に逆転を許し、1―7で敗れた。甲子園で悲願の1勝を挙げ、3回戦も最後まで粘り強く戦った選手たちに、スタンドからは「よくやった」と大きな拍手が送られた。【福原英信、竹林静】 「打って流れを作る」。二回表、その決意の通り4番・藤井啓輔(3年)が左中間を破る二塁打を放ち、先制の口火を切った。5番・岡本一颯(いっさ)(同)も安打で続く。無死一、三塁から田中春樹(同)の内野ゴロの間に藤井が生還し、先制点を挙げた。宮秋孝史監督は藤井について「積極的に打ちに出るという姿勢を貫いてくれた」と評価。スタンドで見守る父浩二さん(56)は「誰よりも練習している。その成果が出てよかった」と喜んだ。 二回裏に同点に追いつかれた場面では、二塁手の林大遥(3年)が二遊間を抜けるかという当たりを飛びついてキャッチ、打者をアウトにしてスタンドを沸かせた。母の友美さん(43)は「見せ場を作ってくれた。いい流れにつなげてほしい」と期待を込めた。 五回裏、適時打で逆転されると、内野陣がマウンドに集まった。「ここで踏ん張って次につなげよう」と声を掛け合い奮起。応援団も「まだ試合は終わっていない。ここから流れを引き寄せよう」と呼び掛け、声援が一層力を増した。その後も相手打線を抑えきれず、じわじわと離される展開に。宮秋監督は「山梨学院の打線は甘い球を逃さずに捉えてきた」と振り返った。 藤井らと同級生で、応援団長を務めた田村凱大(かいと)さんは「結果は本当に悔しいが、声出しが解禁された応援は想像以上に楽しかった。1勝してここまで連れて来てくれて感謝している。夏にまた戻ってきてほしい」と選手たちをたたえた。 ◇“専属カメラマン” ○…光のアルプス席ではナインを追う“専属カメラマン”が雄姿を収めた。保護者会で写真係を務める林大遥(3年)の母友美さん(43)と、大谷優輝(3年)の母陽子さん(50)。「仕事で現地に来られない保護者もいるから」と、普段の練習試合から撮りためている。プロに頼む時もあるが、この日は中古で購入した一眼レフカメラなどを首から提げ、ネット際でシャッターチャンスを狙った。友美さんは「選手たちに夢はいつかかなうと教わった。良いシーンは撮ることを忘れて見てしまう」。陽子さんは「笑顔を収めたい」とファインダー越しにチームを見つめた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■白球 ◇「夏に戻ってくる」 升田早人投手=光3年 「攻めの投球で力は出し切った。実力差で負けた」。ここまでチームをけん引してきたエースは自責点6を喫して敗れた後、悔しそうに振り返った。 2022年夏、甲子園の県大会で先発したが初回に5失点。試合に敗れ、田上昌徳・投手コーチに「マウンドに立つ覚悟がない」と叱責された。そこから練習への取り組みが変わり、チーム全体を考えた投球を心掛けるように。中国地区大会は全4試合を投げ切り、準優勝に貢献した。 センバツ初戦の彦根総合戦は、被安打3で完封。11奪三振、自己最速の143キロを記録するなど内容も充実し、山梨学院の吉田洸二監督に「今大会の右腕で一番」と警戒されるまでに成長した。敗北はしたが「持ち味のインコースの真っすぐは打たれなかった」と手応えもつかんだ。直球をさらに生かすため、今回打たれた変化球を磨くと意気込む。 「将来も野球に携わって生きたい」という夢がある。そのためにも「夏の甲子園に戻ってきて、人生を切り開く」と力を込めた。エースの挑戦は、まだ終わっていない。【福原英信、竹林静】 〔山口版〕